あの“ネタ番組”の影響で芸人たちが媚びるように
――としみつさんは、野田さんと村上さん(36)がマヂカルラブリーを結成する際にも関わっているんですよね?
としみつ 村上が周りに「野田と組みたい」って相談したらしくて。人づてにその話を聞いて紹介しました。実際に2人でやってみて、野田もすぐに「これはイケる!」と思ったんでしょうね。その前に野田が組んでた「アンビシャス」ってコンビのときは一切オレらにネタを見せようとしなかったし、いまだに語りたがらないんですよ(笑)。ただ、マヂカルラブリーの時は、コンビ一発目の舞台が終わってすぐに知らせてきました。
野田のピン時代って、本当にインディーズっぽいネタをやってたんです。誰もが「意味わかんないな」って見てる中で、村上だけが「これは天才だ!」と感じてた。村上は当時、法政大学に通っていて、「コバヤシーン」というトリオで活動する有名な学生芸人だった。大学お笑いサークルの全国大会で優勝もしている。そんなヤツが自分のトリオを辞めてまで、野田とコンビ組んでますから。よっぽど野田の才能に惚れたんだと思います。
――そんな野田さんはお二人を「師匠」とあがめています。お二人の稽古場や家に出入りして、モダンタイムスのチラシやホームページも作っていた。なぜ、そこまで慕われたと思いますか?
としみつ 当時は、彼にとって兄貴的な存在だったんじゃないですかね。
川崎 お姉ちゃん系はオレが教えてたんですよ(笑)。お笑いの方は、としさん。オレらが好き勝手やってるのを見て、「やっと自分に近い人に出会えた」っていう嬉しさがあったんだと思います。周りは、もっとマジメにネタに向かい合う感じだったんで(笑)。だけどオレらはウケるよりも好きなことを優先していて。それが「格好いい!」みたいに思ったんじゃないですか。
――2000年代は『エンタの神様』(日本テレビ系)をはじめとするネタ番組ブームで、わかりやすくてインパクトの強い芸人さんが注目を浴びた時期ですよね。
川崎 『爆笑オンエアバトル』(NHK)が始まって、芸人たちはどんどん客に媚びるネタになっていったんですよ。実際、『オンバト』に出演していた芸人さんが、「みんな営業ネタみたいになっていった」って言いますからね。
としみつ 日本の“お笑い史”で『オンバト』の影響はデカいかもしれないですね。『エンタの神様』がよく引き合いに出されるけど、実は『オンバト』がお笑いを壊したって気がする。もちろん、『オンバト』で勝ってた人が賞レースで結果を残してたりもするから一概には言えないんですけど(笑)。
オレらも含めて、地下で活動する芸人たちは「そっちには行かない」と思ってた。オレらは『オンバト』『エンタ』にハマらなくてもいいから、ライブで見せてやる!と息巻いてた。お客さんが入るわけでもないのに。今思うと、何であんなに尖ってたんだろう(笑)。
――野田さんはそういうお二人に親近感を持ったんじゃないですか?
川崎 まぁブレてないっていう意味ではそうかもしれないですけどね。
としみつ でも、いま40過ぎてブレてないのって、ただのヤバい芸人じゃないですか(笑)。
川崎 いまだに事務所の人から怒られます(笑)。「お前らいい加減にしろ! 客に媚びてくれよ、もういいから」って。