2020年の『R-1』、『M-1』の2冠に輝いたマヂカルラブリーの野田クリスタル。彼は高校時代、『学校へ行こう!』(TBS)の企画「お笑いインターハイ」でも優勝。その時から「お笑いのプロ」という意識が芽生え、クラスメイトを「素人」と呼び、友達を失ったり、自分を「松本人志の生まれ変わり」だと信じて他の芸人たちを見下したりしていたといった“尖り”エピソードは枚挙にいとまがない。普通なら芸歴のどこかで自分は“松本人志”にはなれないと気づき、“丸くなって”いくものだが、地下ライブで「天才」と崇められていた野田は、尖ったままだった。遂には「突き詰めた笑いはスベる」「スベってる笑いこそが笑い」「ウケてる芸人はダサい」と考えるようになった時期もあったという。
そんな野田を番組では「壁ある芸人」と表し、それを矯正しようという企画が行われた。その方法は共演者の女性タレントと控え室で仲良くなる方法を会得するというもの。そうとは知らず偽番組で野田のパートナーとしてやってきたのは、舞台「こどものおもちゃ」で主演、現在も『アイカツプラネット!』(テレビ東京)に出演する小椋梨央。彼女と打ち解けるため、モニタリングルームにいるおぎやはぎと劇団ひとりが遠隔で野田に無茶振り。指示を受けた野田の失礼な言動に対しても笑顔で返していた彼女だが、その様子が変わる時がやってくる。番宣コメントを撮影した時だ。最後に一発ギャグを要求されスベる野田。「彼女のせいにして」という指示を受け、「小椋さんに考えてもらった」とディレクターに言い訳する野田に「ちょっ!」と明らかにムッとした表情。その間が抜群だった。「私のせいみたいになってるじゃないですか!」と責任のなすりつけあいのような展開に。この手の企画に出る女性タレントは笑いながら相手を気遣うというタイプの“いい子”が多かったので、彼女の負けん気の強さは新鮮。『ゴッドタン』にはこういう知られざる“逸材”に出会う喜びがある。
何度かギャグのやり直しを要求され、ふてくされても良さそうな状況なのに、いつしかコンビのように一緒に考えていく。話し合いの中で出たギャグ案も「ぬるいですよね」と考え直したり、アドリブを任されても「はい、わかりました」と受け入れる。さすが、舞台を経験している人は強い。最後はアドリブ漫才のようなものにまで対応し、ディレクターからも「OK」をもらう。けれど、その出来にまだ納得できなかったのか「ラスト1回ぐらいやっときます?」と向上心も凄まじい。モニタリングルームに戻ってきた野田も「あの子だけっすよ、あれできるの」と絶賛。まだ19歳。これこそが、いい方向の尖り方なのではないか。
INFORMATION
『ゴッドタン』
テレビ東京系 土 25:45~
https://www.tv-tokyo.co.jp/god/