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「野田クリスタルが組みたがったもう一人の天才がいた!」地下時代のマヂカルラブリーを見出した“師匠”を直撃

“マヂカルラブリーの師匠”モダンタイムス インタビュー#1

2021/04/25

genre : エンタメ, 芸能

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「もうダメですわ」野田クリスタルの心が折れた理由

――野田クリスタルさんの芸風は、出会った頃から変わってないですか?

としみつ 根本は変わってなくて。最初から、年下ながらに「すごいヤツが現れたな」って感じでした。2017年のM-1で上沼恵美子さんを怒らせた「野田ミュージカル」みたいなネタをピン時代にもやってましたよ。あとは、『まんが日本昔ばなし』のエンディングの「にんげんっていいな」って曲を流しながら、ランニングシャツにパンツでネタを披露したり。その時期もウケてはいました。

モダンタイムスの、としみつ(左)と川崎 ©️文藝春秋

 でも、「アンビシャス」の時はTHE GEESEとかアルコ&ピースのパクりみたいなネタをやって、本当に“ゼロ笑い”で解散しちゃった。当時、野田から「どうしたらいいですか?」って相談されて「いや、野田で笑いをとったほうがいいよ」って答えた覚えがあります。

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川崎 僕も、野田が高校生の頃からずっと「天才だな」って思ってました。いまのマヂカルラブリーも、野田がピンでやってたネタを村上がツッコんでるってだけですよ。

としみつ 結成当初のマヂカルラブリーもすごいネタやってたよね。たとえば、「東芝の社員当てゲーム」とか。「あなた東芝の社員ですよね?」「いや、違います」「何だ、このゲーム」みたいなやり取りの漫才。よくわかんないけど、すげぇネタだなって(笑)。どれも野田のピン時代に原型があるんですけど、村上のツッコミがあるから見やすくなったのは間違いない。ただ、その後、吉本に行ったんだけど、なかなか結果がついてこなかった。

川崎 M-1が2010年で一旦終わったんですけど、そのころ「マヂカルラブリーが決勝に行く」って言われ始めてたんですよ。だけど実現しなかった。

 それで野田が落ち込んじゃって……。「ちょっともうダメですわ」って電話がきて。「まーさん(川崎)って、いつまでお笑いやるんですか?」って聞いてきたから、「オレらは80歳になってもお笑いやるよ」って伝えたんです。そしたら野田が「良かったです。じゃあ僕も一緒にやらしてください」って。それでちょっとだけ元気になったんですよね。「まだ会議室みたいなところでライブやってんですよね?」「やってるよ」「僕もそこ行っていいですか……」みたいなやり取りして。あの頃って、野田が『THE MANZAI』にもハマらなくて、M-1も終わっちゃったから、本当に心が折れてたんでしょうね。

としみつ そうそう。野田はその頃、「モダンさん、最後はそっちに行くんで」みたいな感じだったんですよ。その後、マヂカルラブリーはコントがちょっと当たった。『キングオブコント』で準決勝行った時に「コントで好き勝手やったらウケた」と手応えを感じて、漫才もそっちに戻ったんです。腕も上がって見やすくなった。それで結果もついていったんでしょうね。

現在のマヂカルラブリーの2人(マヂカルラブリー野田公式Twitterより)

――2017年にはマヂカルラブリーがM-1決勝に進出して、そこで上沼恵美子さんに酷評されたエピソードを2020年の決勝で回収しつつ、劇的な優勝を果たしました。

としみつ 絶対にあいつは、ただでは転ばないじゃないですか。「怒られた」とか「漫才じゃないって言われた」とか、必ず一個持って帰ってくる。ただの優勝じゃないんです。何割かは納得していない人がいて、そこで物議を醸してドラマをつくれる。ただの「おめでとう」だったら、もうとっくに終わってますからね。