「一人だけ飛び抜けてる」野田が組みたがった“天才”とは?
――お二人は、地下時代のアルコ&ピースの平子祐希さん(42)、酒井健太さん(37)にも会っているんですよね。
としみつ ホトトギス時代の酒井は本当に天才。周りの芸人は誰もが「すげぇヤツが現れた!」って言ってました。一目置かれていましたから。
川崎 ネタ会を外苑前のライブハウスでやった時、元「フォークダンスDE成子坂」の故・村田渚さんがホトトギスのネタを見て、平子にボソッと「天才やん、こいつ」って言ったらしい。それぐらいの存在だった。
としみつ 今の酒井しか知らない人に言うと、みんな笑うんですけどね(笑)。本当に地下芸人の間では「酒井は一人だけ飛び抜けてるな」って感じで、もうお客さんも「ラーメンズ」を見るような目ですよね。前傾姿勢でネタを見られている感じ。ホトトギスのネタを見て笑わないほうがセンスない、って思われちゃう雰囲気ですよ。今でも野田とかと会うと絶対その話が出るんです。「酒井は本当にすごかった」って。
逆に平子のいた「セクシーチョコレート」は本当にダサくて。筋肉ネタで笑いをとってはいたんですけど、芸人から人気がなかった。でも、平子って見た目がいいじゃないですか(笑)。それもあって、平子と酒井が組んだ時はインディーズ界に激震が走りました。
その頃、野田は自分のコンビを解散したタイミングで、酒井と組みたがってたんです。それでオレに「ちょっと繋げてもらえませんか?」って相談しにきた。だけど、酒井の方が「僕じゃ野田さんを持て余すんで、ちょっとコンビ組めません」って(笑)。それで平子のほうにいったんです。
――アルコ&ピースは結成してすぐ結果を出したんですか?
川崎 結成間もない頃、「中野 Studio twl」(東京・中野にある老舗のライブハウス)に人が入り過ぎて、舞台の横にお客さんがいる状態だった。今考えたら、あれ消防法とかに引っかかると思うんだけど(笑)。それぐらいの人気でしたね。
としみつ もともと平子が器用だったから、最初は酒井の世界観で入っていったんですよ。でも、徐々に酒井が自分の色を消していって今の形になった。そしたら最終的に、酒井がポンコツみたいな扱いを受けるようになった(笑)。
川崎 何もできないとか、ラジオだけよくしゃべるとかね(笑)。あの頃の酒井みたいに覚醒してほしい。
としみつ あいつが本気でネタをつくったらヤバいと思いますよ。覚えてるのは、酒井以外の2人が組体操して、サングラスをかけた酒井がそれを傍観してる。それで、たまに酒井がお客さんに「どう? オーディエンス。すごいっしょ」って言うだけのネタ。それがドカーンッて、めちゃくちゃウケる。その酒井が平子と組んで、ちょうどよくポップになった。2人とも演技もうまいから、お客さんにも伝わりやすくなったんだと思います。