すごいドラマを見た。これが『コントが始まる』の感想だ。高校生のときコントを始め、笑いを追い求めた三人の青年が、売れなくてもめげずに足掻いていたら、十年がたっていた。
コント集団マクベスの三人は、春斗(菅田将暉)、瞬太(神木隆之介)、潤平(仲野太賀)。三人とも二十代の後半だ。この世界では若手で通用しない歳だ。
冒頭は彼らのライブだ。そしてコント映像がスーッと引き、マクベスの舞台にネットで見入っていた中浜里穂子(有村架純)の顔がアップに。「どこがそんなに面白いの?」と、隣に座る妹、つむぎ(古川琴音)が、さして気もなさそうに問う。コント笑えないし、イケメンもいない。お姉ちゃん、どうしちゃったの。
「マクベスさん、店でネタ作りしてるの」。一年前に開店したファミレスで姉はバイトをしている。毎晩ネタを作り、雨でも公園で練習する彼らを見て、里穂子は彼らに興味を募らせる。
意を決し、ライブに初めて行く。コントが終わったとき、春斗が「最後に大事なことを」と客に伝える。「次回六月の単独ライブをもちまして、マクベス解散!」。里穂子は愕然とする。「私はこの先、何を支えに生きていけばいいの?」
十年前。高校の文化祭で「コントやろうぜ」と春斗を誘ったのは潤平だ。瞬太は当時、日本一のゲーマーだった。大学へ行かずコントをやるといったのは春斗だ。「潤平、おまえしか相方は考えられない」と付け加え、マクベス誕生だ。
だが笑いの世界は甘くない。五年しても低空飛行だ。再会した瞬太はゲーマーを辞めるという。もう若い連中には敵わない。なら、マクベス入れよ。こうして三人の生活が始まった。
オーディション不合格の後、瞬太が「ラーメン食って、帰ろうぜ」と二人を誘う。瞬太は車で西を目指す。東名、阪神。関門海峡も渡る。博多の有名ラーメン店に入り、全員が三回ずつ替え玉した。もう腹が一杯。すると春斗が黙っている。他の二人も声を出さない。「解散するか……」。長い沈黙の後で春斗が口を開いた。すると他の二人が笑ったんだよ。「それって、ラーメン食べ終わってからいおうと決めてたの?」と瞬太。そして潤平は「オマエって、大事なこというとき、いっつもラーメン食った後いうな。俺のこと誘ったときもそうだったろ」。笑いながらいううちに、嗚咽が始まる。号泣しながら「それが一番笑える」と潤平が叫んだ。「十年前の伏線回収してんじゃねえよ」
もう青春を過ぎようという男女が、懸命に生きる姿を、ユーモアを織りこみ、爽やかに描きだす。
暑苦しくないし、嘘っぽくもない。そんな青春後期を、彼らは生きてみせるだろう。いまからコントが始まろうとしているんだ。
INFORMATION
『コントが始まる』
日本テレビ系 土 22:00~
https://www.ntv.co.jp/conpaji/