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倒産屋

 

 昭和29年頃に大阪で見られた悪徳な業者。この仕事は当時の時代背景があって生まれた。戦後混乱した経済状況は朝鮮戦争による特需で回復したが、戦争の休戦と世界的な景気後退の波に押され、昭和29年に日本は不況に陥っていた。デフレによってとくに中小企業は経営悪化が著しかった。そこに付け入ったのが倒産屋である。企業が破産宣告を受けた、あるいは倒産しそうだという情報をすぐに嗅ぎつけ、経営者から在庫品を安く買い取ると、それをよそに高く売って儲けた。

 対象が靴屋であれば、在庫にある靴を半値以下で売れと倒産屋が脅迫し、3000円の靴を1000円で買い取る。倒産間際の会社にとっては、在庫が一掃されるので、渡りに船と思わせる。だが買い取った後に、在庫整理を手伝ったのだからとさらに手数料を要求した。さらに買い取った靴は他の店に2000円で売るといった按配である。

流れたデマで本当に倒産も…

 彼らの手口はそれだけではない。倒産寸前で何とか経営している中小企業も標的にする。業界内や取引先にこの会社は危ないとデマを流すのだ。

 デマ情報を書いたガリ版刷りの紙を周囲に配るのも彼らの常套手段だった。会社の関係先はデマを本気で信じて、取引や融資に難色を示すようになるため、本当に倒産に至ってしまうことがあった。

 倒産屋の手法は法律違反すれすれの悪どさで、懸命に生き残りをかける中小企業にとって心底恐ろしい相手だった。

 だが、倒産屋が利益を上げたのは一時的なことだった。昭和30年になると景気が回復し、神武(じんむ)景気が訪れ、日本は高度経済成長時代に突入する。中小企業も活気を取り戻すと、倒産屋の姿は見られなくなった。

 しかし平成不況の今日、法の網をくぐり抜けるように、粉飾倒産屋、倒産整理屋、会社売買屋、住所貸し、電話代行業など、昭和時代よりも複雑な手口で企業を倒産に追いこむ業者が出ている。

【data】倒産させる確率:およそ3割(昭和20年代後半)

【参考文献】〈週刊朝日〉昭和29年6月13日号

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