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《尼崎連続変死》喉骨と肋骨3本が折れ、体重は22キログラムに半減…暴力で家族を乗っ取った“恐怖支配”の実態

『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』より#1

2021/05/04

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会

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 また一部報道にあったが、その流れのなかで、美代子がB子に対し、非公然売春地帯として知られる“飛田新地”(大阪府)で働くことを命じたこともあったという。その際、マサが運転するワンボックスカーで現地へと連れていき、B子を伴って「働かせて欲しい」と店を訪れたそうである。実際に働かせることこそなかったが、そうした“カタギに効果的な”脅しは頻繁に織り込んでいたようだ。

 11年2月になり、同席させられていたA男家の親族らは勤務先や親族宅に避難して、連日の家族会議から逃げ出すことができた。一方でB子家は同年4月からC子とB子の長女、次女が、家を出てA男の住むワンルームマンションで同居することになった。そこでB子だけは美代子らが住む分譲マンションで同居することを命じられた。当時、A男だけでなく、B子も美代子の攻撃対象となっており、そのための強要だった。この同居期間中、美代子はこれまで子供たちへの「養育を怠っていた」や「虐待していた」とB子を集中的に責めては、殴ったり、煙草の火を押しつけるなどした。責任を取って自殺しろと迫ったこともある。同時にA男に対しても、「B子を好き放題にさせていたお前にも責任がある」と自殺を迫ることがあった。またあるときには、食事制限を科されていたB子がチョコレートや現金を隠し持っていたことが発覚。激怒した美代子はB子に手錠をかけて殴る蹴るの暴行を加え、顔に煙草の火を押しつけたうえで、同席していたA男とC子も制裁に加わるように命じ、2人に暴力を振るわせたのだった。

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家族は分断され恐怖から互いに暴力を行使するように

 すでに大人たちは美代子への恐怖から互いに暴力を行使するようになり、子供たちは美代子に言い含められるまま両親、伯母、祖母への憎悪を口にしていた。家族はまさに美代子が企んだ通りに分断されたのだ。

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 美代子はB子の2人の娘のうち、長女を可愛がっていた。そのため、 “角田ファミリー”が月に一度は通っていた飲食店にも連れていった。当時のことを店長は記憶している。

「しばらく集団のなかに中学生くらいの少女がいました。顔立ちの整った美少女です。ただ、子供なのにどこか美代子の顔色を窺うというか、気を遣っている雰囲気がありました。彼女はまだ小さかった優太郎と瑠衣の子供2人の面倒を見ていました」

 長女は美代子の決定で、同年6月にはA男のマンションを出て、美代子と同じ分譲マンションで暮らすようになった。その一方で、連日続けられていた家族会議では、A男・B子家が暮らしていた二世帯住宅の処分についての協議がされていたが、あるとき美代子が「(土地名義人の1人である)D子(編集部注:C子、B子の母)がいないのはおかしい」と口にした。そこで同月下旬にマサ、A男、C子、B子、長女、次女で東京へと向かい、妹宅にいたD子さんを半ば強制的に連れ戻したのだった。