容姿ネタの割合が増えすぎると"いやな感じ”になる
――たしかにぼる塾は、メンバー間の容姿のギャップを笑いに変えるネタを得意としている印象です。
鈴木 彼女たちにとって、容姿は笑いをとる武器なんですよ。その武器を活かせないのは、本人が一番やるせないでしょうね。とはいえ、容姿ネタを武器にする芸人さんが気を付けなければいけない落とし穴もあると思います。
――どんな落とし穴があるのでしょうか。
鈴木 容姿ネタだけを強調する笑いのとり方です。マイナスをプラスに転じるような工夫がなければ周囲も引いてしまいます。そもそも見た目はフックであって笑いの本質じゃない。容姿ネタが“いやな感じ”になる時は、見た目イジりからの展開がないケースがほとんどだと思いますよ。
――嫌悪感が高まると、おもしろいかどうか以前にシャットアウトされてしまいそうです。
鈴木 そういう意味でも、あんりさんはバランスが絶妙だと思います。浜田雅功さんに「パンスト被ってる?」と聞かれたり容姿をネタにされることも多いですが、鋭い切り返しやツッコミの上手さによって、見た目イジりが中和されるんですよ。ハゲネタ代表のトレンディエンジェル・斎藤司さんもポジティブすぎるキャラが容姿を凌駕していて、観客を“いやな感じ”にさせない腕のある芸人さんだと思います。
制約があった方が創造力は発揮されやすい
――容姿を上手く武器にして笑いに変え続ける芸人がいる一方で、今後は3時のヒロインのように容姿ネタをやめる芸人も増えると思いますか?
鈴木 芸人さんの適応力は本当に高いので、今後どうなっていくかは想像もつきません。ただ「容姿ネタ」への風当たりが強い現状は、芸人にとってチャンスだという見方もできると思うんです。
――どういうことでしょう?
鈴木 パッと見で判断できる容姿で笑いがとれなくなれば、その人の内面を掘り下げたり外見以外の個性を活かすネタを探す必要が出てきます。そうすると今まで生まれなかった笑いが噴出する可能性もある。制約があることで、むしろ創造力は発揮されやすいと思うので。
個人的には、お笑いと「人の容姿に言及することの是非」の問題は、どこまで行っても噛み合わないだろうと考えています。人が「好奇心」と「恐怖心」のどちらも捨てられないのと同じです。どっちも必要だし、バランスを取るしかない。
今は地震や豪雨、SNSの誹謗中傷、コロナ禍……と社会的な背景もあって、「自分も被害に遭うんじゃないか」という恐怖と隣り合わせの時代だと思うんです。視聴者がもう少し寛容な目でバラエティーを見られるようになれば、容姿ネタに対する過剰反応もなくなっていくと思いますけどね。
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