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 それから半年ほどが過ぎた2003年5月1日。テレビを見ていると、謎の白装束集団が岐阜県の林道を占拠しているとのニュースが流れてきた。

「あの時の集団だ!」

 そう思った私はとっさに自宅を飛び出して、岐阜県八幡町(現在の郡上市)の現場に向かった。

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メディアと警察に囲まれた白装束集団

 しかし、なんとか日没前に着けそうだと思った矢先、数キロ手前で警察に止められてしまった。規制がかかっており、関係者以外はこの先に進めないとのことだった。あくまで個人の趣味として白装束集団を追いかけていた私は、仕方がないので隣の山に向かい、歩いて谷を越えて現場に入ることにした。そうすれば、警察の規制に引っかかることなく彼らに近づくことができるはずだ。

現場で警戒にあたる岐阜県警(2003年撮影) ©鹿取茂雄

 車を降りて山に入る。もちろんそこに道など無いが、幸いにも上空には報道のヘリが飛んでいた。そのヘリを目標にして山を下り、そして登った。辺りが暗くなり始めた頃、藪をかき分けて道路に出ると、まさにそこが“現場”だった。昨年見たあの車両、あの集団が、目の前に現れた。

 とはいえ、周囲の状況は昨年と全く異なっていた。車止めを置いて警戒する警察に、周囲を取り囲む記者やカメラマン。白装束を上回る数の報道陣と、林道を埋め尽くすメディアの車両……。

 警察は規制をかけて辺り一帯を通行止にしていたが、これでは誰が林道を占拠しているのか分からなかった。

「パナウェーブは帰れ!」と書かれた看板(2003年撮影) ©鹿取茂雄
地元住民からの反発も大きかった(2003年撮影) ©鹿取茂雄

そもそも「パナウェーブ研究所」とは?

 謎の白装束集団の名前は、パナウェーブ研究所という。宗教団体である千乃正法会が運営しており、“研究所”を名乗っているが、実態は宗教団体の傘下組織という位置づけだった。

 千乃正法会は、会長である千乃裕子氏(2006年に逝去)を教祖とし、宗教と科学は表裏一体であるとして宇宙の真理や科学について啓蒙していた。しかし、「共産ゲリラからの電磁波攻撃により強制失禁させられている」と訴えるなど、科学的とは言い難い主張が目立っていた。