千乃会長はこの“電磁波攻撃の被害”について繰り返し主張していて、「パナウェーブ研究所」も電磁波の一種であるスカラー電磁波の有害性を訴える目的で設立されたようだ。パナウェーブ研究所は福井県の山間部に本拠地を置き、1997年からキャラバン隊を結成して全国を回る活動を展開していた。キャラバン隊にはスカラー電磁波を防ぐという白色が多用され、車には渦巻き模様が大量に貼り付けられていた。
千乃正法会の機関誌を読んでみると……
私もパナウェーブ研究所という名称は、2003年のこの時、はじめて耳にした。だが、千乃裕子という名前には覚えがあった。こちらも遡ること6年。1997年に、大学の図書館に置かれていた千乃正法会の機関誌『JI科学時代の啓蒙書(1997年5月号)』を偶然見つけていたのだ。そのほとんどが千乃裕子氏の記述によるものだったが、内容があまりにも怪しく、疑似科学やカルトの要素が満載で、とても気になった。
冒頭の“天上界からのメッセージ”の章からして、意味不明だ。死闘の末にサタンを二度滅したが、再び悪の勢力をかすり集めて千乃様を襲ってきたので最終決戦となりました、などと書かれている。
次の“雑ノート”の章は「卑劣な共産党を含む左翼ゲリラは、毎月締め切り日が設定されると、その日ギリギリ夕方近く迄、隊員たちにマインド・コントロールを駆使して私に原稿を書かせません!」という文章で始まっている。
機関誌にはそんな内容が延々と記されていた。後になって思えば、これが私と千乃正法会、パナウェーブ研究所とのファーストコンタクトだった。
「人類滅亡の危機が近づいている」
2003年にワイドショーで取り上げられた時、キャラバン隊はある目的のため、山梨県に向かっていた。彼らの主張によると、ニビルなる惑星が地球に接近し、人類滅亡の危機が近づいているため、山梨県大泉村(現在の北杜市)にあるドーム型施設へ避難しつつ、周囲の人たちに避難を呼びかけている……とのことだった。
だが、その速度は非常にゆっくりしたもので、5月5日になっても、一行はまだ岐阜県清見村(現在の高山市)にいた。その日、朝6時からパナウェーブ研究所による記者会見が行われることを知った私は、夜明け前に現地へ向かった。早朝5時に屋外の会見場に着いたが、早すぎたのかまだ誰もいなかった。そこで脚立に座って待っていると、岐阜県警の警備主任が話しかけてきた。