「上がりやすく落ちやすい」竜王戦、「上がりにくく落ちにくい」順位戦
ただし、順位戦はその頂点である名人に挑戦するためにはA級に昇級する必要があるため、挑戦まで最低5年かかる。これは現行規定においてはどうやっても短縮できない。対して竜王戦は、6組からでもランキング戦及びその先にある決勝トーナメントを勝ち進めば竜王に挑戦することができる。また竜王にはなれずとも、七番勝負に登場すればその時点で1組昇級が確定するため、6組から一足飛びで1組に上がることも不可能ではない。
1987年の第1回三段リーグを抜けて四段昇段を果たした棋士が、ちょうど第1期の竜王戦にも6組で初参加しているので、現行の三段リーグを経験したプロ棋士(145名)のうち、何名が1組とA級にそれぞれ昇級したかを数えてみる。
結果、竜王1組に昇級経験があるのは藤井と八代を含めて35名。対して順位戦A級は23名である。そして、A級経験者23名のうち1組経験がないのは1人だけだ。
竜王1組のほうが数字上では昇級しやすいわけだが、それぞれの昇級枠数を考えれば自然とも言える。竜王戦は各クラスの昇級枠が4つある(第1~18期までの2組→1組のみ3名)のに対し、順位戦は3あるいは2つの昇級枠しかないのだ。結果として竜王戦と順位戦のクラスのギャップが生じることになる。
そして竜王戦と順位戦の差は降級システムにもある。ランキング戦で2敗(4組以下は3敗)すれば問答無用で落とされる竜王戦と、「降級点」制度のあるB級2組以下では仮に0勝でも1年は落ちずにすむ順位戦の違いは大きいだろう。去年の渡辺明名人、今年の斎藤慎太郎八段と、直後に名人挑戦を果たす棋士が2年続けて竜王戦で1組から2組に落ちている。
「上がりやすく落ちやすい」のが竜王戦で、「上がりにくく落ちにくい」のが順位戦なのだ。