将棋界において棋士それぞれの格を表すのが、竜王ランキング戦と順位戦のクラスだろう。竜王戦は1組(定員16名)、順位戦はA級(定員10名)が最高のクラスである。
各棋戦のタイトルホルダーを別格とすれば「1組とA級の双方を維持する棋士が超一流」と言えるだろう。新年度が始まった2021年4月1日時点では、1組(竜王含む)とA級(名人含む)の双方にいるのは豊島将之竜王、永瀬拓矢王座、羽生善治九段、佐藤天彦九段、山崎隆之八段、糸谷哲郎八段の6名である。
棋戦ごとのギャップが生まれる理由とは?
そして現在、竜王戦のランキング戦が各クラスで佳境を迎えている。藤井聡太二冠が2組で優勝し、1組昇級と同時に史上初のランキング戦5連続優勝を達成したことは大きな注目を集めた。藤井は順位戦でもA級まであと一歩のB級1組まで上がっており、こちらも早々に最高峰へ昇ることが予想される。
その藤井と竜王戦2組の決勝を戦ったのが八代弥七段だ。決勝では藤井に敗れたが、八代も1組昇級と決勝トーナメント進出を決めている。過去には朝日杯将棋オープンで優勝した経験もあり、一流への道を着実に昇っていると言えるだろう。
ところが八代の順位戦に目を移すと、なんともっとも下のクラスであるC級2組なのだ。竜王1組とC級2組に同時在籍した棋士は、1995年の先崎学九段以来、史上2例目である。棋戦ごとのギャップを意外に思う方も多いのではないだろうか。このような事象がなぜ生じたのかを考えてみたい。
竜王戦と順位戦それぞれにおいて、どちらがより頂点まで駆け上がりやすいか。竜王戦は1組から6組までの6階級で、順位戦はA級からC級2組までの5階級である。そして、どちらの棋戦も原則として1年に1階級しか上がらない。