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《ほとばしる“ダム汁”》女王、レジェンド、昭和モダン…日本一巨大な平野を支える関東圏のダム6+1選

2021/05/16
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2、ダムの女王・“静”の「奈良俣ダム」

奈良俣ダム 場所・群馬県みなかみ町/管理・水資源機構 ©️宮島咲

 矢木沢ダムのすぐ隣にある奈良俣(ならまた)ダム。ロックフィルという型式で、高さが158mもある。石を積み上げた構造をロックフィルダムと呼び、石と土のみで造られる、地球にやさしい天然素材のダムだ。石は、建設現場近くから採取されるのだが、このダムはあえて白い石のみを使用して造られた。

女性の様なふくよかさを感じるダム ©️宮島咲

 ロックフィルダム特有のなだらかさと、ふくよかな曲線美。それに加え、このダム特有の真っ白な堤体(ダム本体)から、「ダムの女王」と呼ばれた日々もあった。「あった」と過去形で表現した理由は、誕生から約30年以上経過してしまっており、白さを失い、だんだんと黒ずみ、石の間から草木が生えてしまったからだ。

天女の羽衣を連想させる奈良俣ダムの放流 ©️宮島咲

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 このダムも矢木沢ダム同様、点検放流がイベント化されており、矢木沢ダムと同じ週末に放流がおこなわれる。このダムの放流を一言で表すのならば「静」であろう。サラサラと導流部を流れ落ちる水が、天女の羽衣の様で見学者の心をひきつける。