今夏、東京・愛知・大阪の三都市でミュージカル『マタ・ハリ』が上演される。本作は2018年、柚希礼音(ゆずきれおん)さん主演で日本初上演され、好評を博した。再演となる今回は柚希さんに加え、愛希れいかさんも、運命に翻弄されるダンサー、マタ・ハリ役に挑む。役の先輩でもあり、宝塚の先輩でもある柚希さんとのダブルキャストに、愛希さんは「ある意味、腹をくくった」と語る。
「なかなかそういう機会はないので、びっくりしたというのが最初の気持ちです。でも、柚希さんは憧れていた方でもありますし、近くでマタ・ハリを作っていく過程を見られるのは、とても貴重な経験。ダブルキャストということに変に気負わず、一緒にがんばれたらいいな、と思っています」
愛希さんは、元宝塚歌劇団月組トップ娘役。娘役でありながら宝塚バウホールで単独主演を務めるなど、劇団のなかでも型破りな存在だった。退団後の活動も嘱望されていたが、宝塚を出た後、芸能活動を続けるか否かには、迷いもあったという。
「卒業を決めた時点では、宝塚の外で表現者として活動するかどうか、考えが固まっていなくて。私は本当に宝塚のファンだったので、宝塚のことしか眼中になかったんです。でも、やめることをきっかけに、外で活躍されている方のお話を聞く機会をいただいたり、外の舞台を『自分だったら』と意識して観たりして、やっぱり経験したい、と思うようになりました」
愛希さんが退団後、初めて出演したのは、奇しくも自身の退団公演の演目でもあった『エリザベート』だった。同じ演目、同じ役で宝塚歌劇ではないミュージカルを経験し、その違いを痛感したという。
「宝塚はなんといっても夢の世界なので、ロマンチックな部分が強く描かれますが、人間臭さみたいなものは逆に消される傾向にあります。同じ作品でも、外の舞台では、人間味のある部分や汚い感情などを恐れずに前面に出していく。そこの違いは、未だに意識しているところです」
共演者からも、様々に刺激を受けた。
「『エリザベート』でいったら井上芳雄さんですとか、ミュージカル界で活躍されている先輩方のエネルギーの強さに圧倒されました。それに負けない自分でいなきゃ、という思いが強くなりましたね」
今年で30歳という節目の年を迎え「一皮も二皮もむけたい」と、ミュージカルにかける決意を滲ませる。
「宝塚の娘役って、あまり自分を出せないところがあって。私は結構、出してきた方かなと思うんですが、それでも、どうすればファンの方に好かれるのかを、常に考えていました。だけど宝塚の外に出たら、娘役としてではなく、1人の女性として自分の足で立って表現しなくてはならない。とにかく上を見て、『本物』であれるように、成長していきたいと思います」
まなきれいか/1991年、福井県生まれ。元宝塚歌劇団月組トップ娘役。6年7カ月のトップ娘役在任期間は、歴代3番目の記録。退団後は『エリザベート』、『ファントム』、『フラッシュダンス』に出演。
INFORMATION
ミュージカル『マタ・ハリ』
6月15~27日 東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、
7月10、11日 愛知・刈谷市総合文化センター、
16~20日 大阪・梅田芸術劇場にて
https://www.umegei.com/matahari2021/