1ページ目から読む
2/4ページ目

翌朝拘置所で再び小指を噛み切った

「その後、小指の具合はどうですか?」と尋ねると、植松はキャップ状になった包帯をポンとはずして、右手の小指を見せてくれた。

「やめなさい!」と係官があわてて制止したが、第二関節から上がなく、赤黒いかさぶたが覆っていた。

「言葉だけの謝罪では伝わらないと思ったから」

ADVERTISEMENT

 初公判(1月8日)で植松が小指を噛んで、係官に取り押さえられたことは大きく報じられたが、驚くべきことに、翌朝拘置所で再び小指を噛み切ったのだ。

 まるでヤクザのケジメだが、「許してもらうつもりはない。恨まれるのは仕方ないから」と植松はいった。

著者に届いた手紙

「裁判では自分の主張を十分に語れましたか?」

 私が尋ねると、植松は意外なことをいった。

「はい。心証を良くしようとしてくださったんで」

「心証を? それは弁護人が? 検察官が?」

「いや、記者の方たちが、皆さんわかってくださっているなと」

 私はあわてた口調で、「わかってくださったとは、『意思疎通のとれない障害者は安楽死させるべきだ』という植松さんの主張を?」

「いや、同意はしないまでも、『わかるよ』と。皆さん、思ってくださってるので」

 いや、それはないよと私はいいかけて、「私も含めて、みんな植松さんに対して、かなり厳しい書き方をしていると思うけど」

「それはそういうものだから。上からいわれるのかもしれないし」

「はあ」

 さらに植松は、判決前に2人の裁判員が辞任したことに触れて、「裁判員の方たちも、わかってくださったんだなと。死刑にするほどの罪ではないと」

 開いた口がふさがらなかった。2人の裁判員がなぜ辞任したのかは発表されていない。植松の超ポジティブな姿勢に、はっきりクギを刺すべきなのかどうかとまどった。

 植松は、第16回公判(2月19日)の最終意見陳述において、こう宣言した。

「私はどんな判決でも控訴いたしません」