「法曹界を揺るがした大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件で、部下だった主任検事による証拠改ざんを知っていながら隠蔽したとして2010年10月1日に犯人隠避容疑で検察当局に逮捕され、13年10月に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が確定した大坪弘道元特捜部長(67)が、ようやく弁護士登録を認められました。
5月1日付で大阪弁護士会に所属し、当面は大阪府吹田市の自宅を事務所にしていくそうです。2011年9月12日の初公判の前、大阪地裁の正門から弁護団とともに一点を見つめるように苦渋の表情で報道陣の前を歩いて裁判所に入っていった姿を思い起こすと、非常に感慨深い思いです。この10年余りという年月は、大坪元部長にとってどのようなものだったのでしょうか」
あるベテランの司法記者はこう語る。
短気ながら、人情派の取調官として知られていた検察官時代
大坪弁護士は執行猶予期間が過ぎた2017年9月、大阪弁護士会に最初の登録申請をしたが、猶予期間が終わってから時間が短いことを懸念する声が上がって申請を取り下げており、今回で3回目の申請だった。弁護士法の規定では、禁錮以上の刑が確定すると弁護士になる資格を失うが、執行猶予期間が過ぎれば登録は可能となる。
「大坪氏は鳥取県立鳥取西高校から中央大学法学部に進学。卒業後、28歳で当時の司法試験に合格した苦労人です。司法修習の同期には元東京地検特捜部長の堺徹東京高検検事長らがいます。検察官時代は“瞬間湯沸かし器”の異名をとる短気な性格ながら、『割り屋』と称される人情派の取り調べ官としても知られていました。
東京、大阪両地検特捜部の交換人事で東京地検特捜部に在籍していた1995年には、オウム真理教の松本、地下鉄両サリン事件で使用されたサリンの製造場所について『山梨県上九一色村(当時)の第7サティアン裏の研究棟』とする自供を土谷正実元死刑囚(2018年7月6日刑執行)から引き出したことは、現在でも関西検察では語り種となっています」(同前)