東京地検へのライバル心と焦りが、事件の背景に
証拠改ざんは、障害者団体向けの郵便料金割引制度の不正利用があったとして、2009年に大阪地検特捜部が障害者団体や厚生労働省、ダイレクトメール発行会社、広告代理店、郵便事業会社などの関係者を摘発した郵便法違反・虚偽有印公文書作成事件の捜査過程で、厚生労働省の元障害保健福祉部企画課予算係長に上司の課長・村木厚子さんが不正を指示していたとして立件を試みたが、証拠がなかったために行われたもの。中央省庁の部課長級幹部を逮捕したいと功を焦った大阪地検特捜部の勇み足が生んだ世紀の犯罪だ。
「特捜部は東京、大阪、名古屋の3地検に置かれていますが、名古屋は1996年に創設された歴史の浅い組織です。大阪地検特捜部も1967年の大阪タクシー汚職や1988年の砂利船汚職などで国会議員を逮捕していますが、これらはいずれも昭和の時代です。
平成以降では、弁護士でもあった西村真悟衆院議員(当時)を弁護士法違反事件で逮捕したのみです。しかも、この事件は大阪府警が端緒をつかんだもので、逮捕も特捜部と府警の合同捜査によるものです。当時、大阪府警の幹部は『地検に事件を横取りされそうになった』とひどい剣幕だったと聞きます。東京地検特捜部にライバル心を燃やす大阪地検特捜部には、絶えず大きな事件をやらないといけないという焦りがあるのでしょう」(同前)
大阪地検特捜部が手がける政治家の事件は、関西圏に国会議事堂も議員会館も議員宿舎もないことから、関西の自治体の首長や地方議員が捜査対象となりがちだ。官僚や役人の事件も中央省庁は関西に出先機関しかないため、地方自治体の役人が捜査対象になることが多い。2009年に郵便不正事件で厚生労働省へ颯爽と家宅捜索に乗り込んでいった大阪地検特捜部の面々の誇らしげな表情は、いまでも忘れられないものがある。