郷はウルトラマンに変身しようとするが、なぜか出来ず、代わりに初代ウルトラマンの声が脳裏に響いた。
「焦ってはいけない郷秀樹。ゼットンは恐るべき武器を備えた怪獣だ。うかつに出ると、私同様不覚を取るぞ」
初代ウルトラマン(*3)の忠告が気になった郷は、変身しようとしない。そこでバット星人は“ウルトラ抹殺計画”を口にする。それは、ゾフィー(脚本での表記はゾフィ)、初代ウルトラマン、ウルトラセブン、つまり裏切り者のウルトラ兄弟(*4)を皆殺しにする計画で、そして今、M78星雲のウルトラ星に(*5)、バット星連合部隊が向かっているのだ。
*3 声は近藤久ではなかった。近藤は声優ではなく、東宝の編集マンで『ウルトラマン』を担当していた。抑揚のない、たどたどしい台詞回しが、かえって異星人の雰囲気を醸し出していた。
*4 ウルトラ兄弟という名称が、番組で初めて使われた。
*5 ウルトラ星という名称も、初めて使われた。
郷は2人の救出を諦め、MAT(編集部注:怪獣と戦う防衛チーム)本部に向かうが、またしてもゼットンが出現した。直ちに出撃するMAT。しかし南と上野が乗るマットジャイロはゼットンの光線で大破、2人は脱出する。郷のマットアローも光線のため、燃料タンクに穴が空いてしまい不時着する。
物語のラストシーンでは十字架の上に郷のヘルメットが…
その頃、バット星人はMAT基地に侵入、心臓部の原子炉を破壊してしまった。そしてルミ子と次郎を夕方5時に東亜スタジアムで処刑すると宣言する。
基地は武器弾薬庫が浸水、一切の武器弾薬は使用不能、エアポートも破壊され、アローもジャイロも発進不能だった。MATに残された武器は、不時着した郷のアローだけだったが、燃料が不足して10分くらいしか飛べない。しかし郷は、10分でもいいから出撃するという。
「隊長。行かせて下さい。ゼットンを倒さぬ限り、地球の平和、いや、全宇宙の平和もないでしょう。この戦いが奴を倒す最後のチャンスなんです」
郷の決死の覚悟を読み取った伊吹は、出撃を許可する。郷は隊員1人1人に握手し、アローに乗り込んだ。その姿を見た上野が思わず呟く。
「あいつ……、まるで死にに行くみたいだな……」
MATとゼットン、最後の戦いが始まった。郷は空からゼットンを攻撃、伊吹以下隊員達は、東亜スタジアムに乗り込んで、バット星人の手からルミ子と次郎を救出する。
伊吹はマットシュートをバット星人に弾かれると、すかさずブローニングを抜いて反撃、弾が尽きるやブーツに仕込んでおいたナイフを敵に投げつけた(*6)。
*6 この辺は、戦いのプロという感じがよく出ていた。脚本に具体的な描写はなく、現場で工夫されたアクションである。
ナイフは見事命中、バット星人はスタジアムから落下したが死ぬことはなく、逆に巨大化してしまった。
郷はアローでゼットンに体当たりしてウルトラマンに変身、巨大化したバット星人とゼットンに戦いを挑む。そしてウルトラクロスでバット星人を、ウルトラハリケーンでゼットンを倒した。