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 夕陽の海岸に十字架が立てられている。その上には郷のヘルメットが乗せられている。

 伊吹隊長(以下MAT)は郷を弔うと、基地を再建するために海岸を後にする。だがルミ子は、郷が帰って来るような気がする、と言い、次郎とともに海岸に残った。

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 全編夢を見ているような、不思議なテイストに満ちた最終回である。そんな印象を抱くのは、劇中夢のシーンが二度出てくることと、冒頭、祝言のシーンの場所が脚本とは違っているせいだろう。

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 脚本で祝言の場は座敷であり、“そこへ長い廊下をすり足でやって来る紋付袴の男(マット基地係官)”や“ルミ子、郷を追って廊下を急ぐ。長い廊下のつき当たりに障子があるルミ子、障子を開ける。ルミ子、アッとなる。バット星人が立っているのだ”といったト書きは不条理劇を思わせる。いや、それよりむしろ鈴木清順映画のワンシーンのようだ。

映像から窺える清順美学の影響

 その独特な映像センスは“清順美学”と呼ばれ、今や世界中にファンがいる鈴木清順だが、72年当時は日活解雇問題が尾を引いて、映画を撮れないでいる時期だった(*7)

*7 67年6月15日公開の奇妙な殺し屋映画『殺しの烙印』(脚本・具流八郎)が、日活社長、堀久作の逆鱗に触れ、68年、日活を首になっていた。

 日活を解雇されたのは68年だが、77年、『悲愁物語』(*8)で映画界に復帰するまで、テレビで『愛妻くんこんばんは』第33話「ある決闘」、『黒部の太陽』第5話「男の中には鳥がいる」(*9)、そして円谷プロで『恐怖劇場アンバランス』第1話「木乃伊の恋」を撮っている。

*8 原作・梶原一騎、脚本・大和屋竺、77年5月21日公開、三協映画、松竹。
*9 『愛妻くんこんばんは』67年10月1日~68年9月29日。「ある決闘」68年6月16日放送。『黒部の太陽』69年8月3日~ 10月12日、NTV。ただし「男の中には鳥がいる」は未放映。

 実相寺昭雄が円谷プロのスタッフに与えた影響は多くの研究家、ファンの指摘するところだが、実は清順の影響も見逃せない。『帰ってきたウルトラマン』でも、第38話「ウルトラの星 光る時」で、特殊技術の大木淳は、ブラックキングとナックル星人が倒されるカットで、清順ばりの真っ赤なホリゾントを使用した。また大木が本編も手がけた『ファイヤーマン』第12話「地球はロボットの墓場」(*10)では、登場人物のバックに真っ赤なバラの画をリアプロジェクションで映し込み、清順への傾倒ぶりを明らかにしている。

*10 『ファイヤーマン』73年1月7日~7月31日、NTV。「地球はロボットの墓場」脚本・岸田森。

 影響が見られるのは大木淳だけではない。『ウルトラマンA』第3話「燃えろ! 超獣地獄」(*11)では、空を割って登場するバキシムのバックが真っ赤、当時のスタッフによると、これも清順の影響だという。また、『ミラーマン』第17話「罠におちたミラーマン」(*12)で監督デビューした志村広もセット美術に清順の影響が認められる。なお志村は、「木乃伊の恋」のチーフ助監督であった。

*11 脚本・田口成光、監督・山際永三、特殊技術・佐川和夫。
*12 脚本・山浦弘靖、特殊技術・矢島信男。