抜群の知名度を誇る『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』といった人気シリーズに比べ、どこか影の薄いシリーズ作『帰ってきたウルトラマン』。しかし、現実に即した舞台設定や作品性の高さはファンから評価され、名作の呼び声も高い。
本シリーズを手がけたメインライターは2020年1月に惜しまれつつもなくなった上原正三氏。彼が最終回で描いた「ウルトラ5つの誓い」は、当時の子どもたちの間で話題を呼び、後続シリーズで何度も使用された印象的な宣誓だ。
ここでは映画評論家の白石雅彦氏の著書『「帰ってきたウルトラマン」の復活』(双葉社)の一部を抜粋。「ウルトラ5つの誓い」が生まれた当時の製作背景について、撮影を担当していた鈴木清氏のインタビューを交えて紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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映画撮影スタッフから「電気紙芝居の準備かよ!」とバカにされた
『帰ってきたウルトラマン』は、第51話「ウルトラ5つの誓い」でフィナーレを迎える。脚本、監督は第1話、2話で基本となる世界を描き出した上原正三と本多猪四郎のコンビ。本多は第9話「怪獣島SOS」、上原は第38話「ウルトラの星光る時」以来の登板であった。
鈴木 『帰ってきたウルトラマン』でまず思い出すのは、監督で言えば本多さんと松林さん、天下の大東宝の監督のカメラマンをやれるなんて夢のような出来事でした。その意味で思い出すのは、東宝撮影所で『ウルトラQ』の撮影準備をしている時(64年)、撮影所のスタッフから「電気紙芝居の準備かよ!」とバカにされたんですよ。この頃になるとニューメディアのテレビの台頭に映画業界の衰退がクロスした時期でしたので、彼らとしては、憤懣やるかたない思いだったのでしょう。
それと、僕なんかは学生時代に東宝の特撮班でアルバイトをやっていたでしょう。それで真野田さん、唐沢登喜麿さん(特撮班のカメラを担当)、山本久蔵さん(『帰ってきたウルトラマン』には火薬効果で参加するがノンクレジット)、あの当時の上司達が続々と特撮で絡んでくる。そういう馴染みのメンバーでやっていたせいか、不思議なことに本編と特撮の打ち合わせは一切なかったんです。「例のごとしでよろしくね」でおしまい。合成カットでも、特撮がらみで本編のリアクションがあるところでも全然。言ってみれば戦国時代、武将同士がお互いの手の内を知りつつ、真剣勝負していたみたいな感じです。
『帰ってきたウルトラマン』の“夢をみているような”最終回
夜明けの海岸で、郷とルミ子の結婚式が行われていた。そこへ紋付き袴の男(*1)がやって来て、伊吹隊長に耳打ちする。報告を受けた伊吹達が紋付き袴を脱ぎ捨てると、その下にマットスーツを着ていた。
*1 脚本ではマット基地係官。演ずるは、本シリーズで怪獣のスーツアクターを演じていた遠矢孝信である。
郷も着物を脱ぎ捨て、ルミ子に別れを告げて出撃する。白無垢のルミ子は慌てて郷の後を追うが、その前にバット星人が出現し、不気味に笑った。
途端、ルミ子は夢から覚めた。彼女と次郎は、バット星人に誘拐され、スタジアムの一室に閉じ込められていたのだ。
同じ頃、郷もまた夢を見ていた。初代ウルトラマンとゼットンが戦う夢だ。郷が目覚めるといきなり電話が鳴った。「(誘拐された)2人に会いたければ、東亜スタジアムに来い(*2)。お前1人で来るのだ」声の主は、それだけ言って一方的に電話を切った。
*2 脚本では国立競技場。実際にロケが行われたのはかつて荒川区に存在した東京スタジアム。
言われた通りスタジアムに行くと、目の前にバット星人が現れる。ルミ子と次郎は無事だったが、客席のフェンスに縛り付けられている。すると突如スタジアムの外にゼットンが現れた。