上原もまた、清順と関わりがある。上原は映像化、未映像化含めて4本の脚本を『恐怖劇場アンバランス』に残しているが(*13)、最初に執筆したのは鈴木清順向けの「朱色の子守唄」だった。上原メモによると執筆は、69年8月20日から23日にかけて行われ、清順との打ち合わせは同月12日、14日に、そして25日に第1稿打ち合わせが行われているが、それ以上は進展せず、手書き原稿のみが残された。作者自身、メモには“さんざんの駄作”と書き残している。
上原 犬神憑きと公害を絡めた話で、清順さんとは打ち合わせもしたよ。確かに出来は悪かったかも知れない。でも清順さんには手下の脚本家がいたからね。手書きで終わったのは、それも一因があるんだよ。
*13 「朱色の子守唄」「月下美人狂い咲き」「恐ろしき手毬歌」(予定監督・真船禎)サラリーマンの勲章」(第10話、原作・樹下太郎、監督・満田)。
一貫して付きまとう“死”のイメージ
話を「ウルトラ5つの誓い」に戻す。実際の映像で祝言のシーンは、夜明けの海岸となっている。狙いなのか予算の都合なのかは判断出来ないが、結果的に、ラストでの夕暮れ間近の郷の弔いと対になっている。海岸での祝言のシーンは、シュールで非現実感を漂わせ、ラストの海岸と対になることによって、あるいは本エピソードは全てルミ子の夢ではなかったのかという印象さえ受ける。
もう一つ、祝言のシーンで、和服姿の丘隊員はカールした髪を結い上げているが、その笑顔はアキそっくりである。これが狙いだとすれば、死者である元恋人が、今の恋人(それはルミ子の願望だが)を祝福していることになり、生と死を飛び越えた世界に主人公達は存在していることになる。
次いで登場する郷の夢は、ウルトラマンの死である。本作には“死”のイメージがつきまとっており、事実、ラストは人間郷秀樹の死で終わる。
海岸に残ったルミ子と次郎の前に、何の前触れもなく私服の郷が現れ、唐突な別れを告げる。
「平和な故郷を、戦争に巻き込もうとしている奴らがいる……。だから手助けに行くんだ」
郷は次郎をルミ子に託し、2人の前でウルトラマンに変身、大空の彼方に消えていった。
海岸を走って“郷”の名を呼び、その姿を追う次郎は、涙ながらにウルトラ5つの誓いを叫ぶのだった。
ひとつ、腹ペコのまま学校へ行かぬこと
ひとつ、天気のいい日に布団を干すこと
ひとつ、道を歩く時には車に気を付けること
ひとつ、他人の力を頼りにしないこと
ひとつ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと
N 「こうして、ウルトラマンは去っていった。しかし、太陽のように強くたくましかった郷秀樹の姿と心は、この少年と少女の心の中で、いつまでも燃え続けることであろう。さようなら、郷秀樹。さようなら、ウルトラマン」(エンディング・ナレーション)