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ヘッドコーチ、演出、マーケティングも最小限

 それから、ヘッドコーチ。

 いわゆる“名将”といわれるような実績のあるヘッドコーチを高い年俸で招聘することもせず、ヘッドコーチは、来季もその役割を担ってくれる可能性の高い選手の1人に兼任してもらい、結果がすぐに出せなくとも、来季にむけたマネジメント力の成長に期待してチームを率いてもらいました。

 それから、試合時の演出。

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 当初より絞り込み、必要最低限なものにしました。チアガールによる演出に関しては、ブロンコスはまだそのフェーズに達していないと判断して休止。その代わり、各クオーターの間は、来場した子どもたちにコートに立ってもらってフリースローを体験させる(成功したら景品をプレゼント)などの試みを行いました。

 マーケティング施策も最小限。集客のためにお金を使って広告宣伝することもほとんどありませんでした。

 たとえば試合会場には、普通ならスポンサー企業の広告が並んでいたりするものですが、それもほぼなし。チームの運営スタッフは、他チームより遥かに少ない4、5人ほど。会場の様子を目にした他チームを含むバスケ関係者からは、「まだスポンサーが少ないみたいだし、スタッフも少ない。これでどうやって(経営と興行を)回してるんですか?」とよく聞かれたものです。

 このように余計なものを徹底してそぎ落とす一方で、本当に必要なもの、かつ、コロナ後の未来へとつながっていく“エッセンシャル”なものについては、集中して積極的に投資をしました。

 

集中して積極的に投資したのは…

 たとえば、音響機材。

 会場では派手な演出イベントを見送る代わりに「音楽」に一点集中する、という決断をしました。重低音ウーハー機材も含めて、ひとつひとつの機材を吟味して導入しましたし、選手からもヒアリングをして、選手のモチベーションを高めるような選曲を行っています。「音響」は、スポーツの興行に不可欠な非日常の空気をつくるとともに、士気を高めるために絶対的に必要な最低限のインフラなのです。

 そして、最も効果的な施策となったのは、新たなマスコットとして、チーム名(ブロンコス=暴れ馬)にちなんで実際にポニーを購入したことでした。一般的な着ぐるみのマスコットを新しく作っても面白味がありません。生きた動物であるからこそ話題性がありますし、チームとともに未来に向けて成長していくストーリー性もあります。いずれは地域の子どもたちとチームをつなぐ、みんなに愛されるマスコットになってくれる、と考え、ブロンコスとしては破格の予算を思いきって投じました。