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億単位の借金、会社の通帳とにらめっこ…最下位「さいたまブロンコス」はなぜ初年度に黒字転換できたのか

億単位の借金、会社の通帳とにらめっこ…最下位「さいたまブロンコス」はなぜ初年度に黒字転換できたのか

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#10

2021/06/05
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バスケの「小規模だからこそ」のメリット

 一つは、地域貢献したいという意志がある企業の最適なパートナーとして認められたこと。

 さいたまには野球やサッカーなど、バスケ以上にメジャーな地域スポーツがあります。でも、バスケは小規模だからこそ、スポンサー料もさほど高くなく、それでいてスポンサー企業にとっても手付かずのPR領域に自社をアピールすることができる。いわば「ブルーオーシャン」ともいえ、地域貢献活動もスポンサー企業と一から一緒に作っていけます。そのため、個々のスポンサーの存在感や、いわば「VIP感」は、相対的かつ必然的に大きくなります。

 地域密着の姿勢を丹念に訴えてきたことで、「新しく生まれ変わった地元のチームを応援してあげよう」という中小規模の企業が増えました。

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 プロ野球やプロサッカーでは資金規模の関係で大きな存在感を得ることができない企業の、スポンサードすることで地域でのしっかりとした存在感とポジションを築いていきたい、という気持ちの受け皿として、ブロンコスはうってつけの存在になれたのだと思っています。

 さらに、チームのあり方そのものが、企業や地域の人たちの心を惹きつけはじめた面もあると考えています。

「映画『ワイルドスピード』好き」がターゲット

 ほぼ日本人だけのチームで、負けを重ねながらも試行錯誤して戦っている。大資本に支えられてはいないけれども、厳しい世界をたくましく生き抜こうとしている。まだまだ至らないことも多々あるけれど、生まれ変わったばかりの地域のプロスポーツの会社の今後の成長とコロナ後の期待を、地域の子どもたちや地域の成長とオーバーラップして感じている。そうした初年度のブロンコスの姿が共感を集めたのでしょう。

 

 実は、新体制が発足したときから、チームとして暴れ馬のようなワイルドパワーなスタイルを見せることは、ブロンコスの目標の一つでした。

 というのも、新体制になってから定めた新規マーケティング戦略における戦略ターゲット層のペルソナは“映画『ワイルド・スピード』シリーズが好きな人”と規定していたからです。

 映画をご覧になった方はわかるかと思いますが、あのアクション映画シリーズの中で活躍している人たちは、大きな組織におもねることなく、思うままに暴れ回り、仲間とともに自由に楽しく成長している人たちです。

 そういう人たちに共感する層をファンにつけたい、と思っていました。