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他の候補者は李氏を引きずり下ろすことに躍起だが…

 中道系の韓国紙記者が言う。

「『国民の力』の党代表選挙の予備選は一般市民と党員の世論調査各50%の結果で候補が絞られましたが、李氏は一般市民の世論調査結果が圧倒的に強かった。特に20~30代の後押しがすごい。それだけ、今の与党の中心にいる586(80年代に大学に通った1960年代生まれの50代。韓国では民主化運動に関わった世代をいう)世代に嫌気が差し、政界再編を望んでいる中道・無党派層が増えたということ。

 最初、野党は、李氏が立候補することで若い世代に門戸を開いているというアピールにもなり、来年の大統領選挙に向けて20~30代の支持層を囲えると思っていたのが、予想外に李氏が圧勝してしまった。本選は一般市民の世論調査30%+党員投票70%で行われるため、他の候補者は今、党内での支持を固めて李氏を引きずりおろそうと躍起になっていますが、李氏の勢いは止まりません。

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 李氏が党代表になれば、野党はこれまでの朴前大統領の呪縛からは完全に抜けられるでしょうから、来年の大統領選を考えると、党関係者からすれば痛し痒しです」

予備選挙で圧勝の「36歳、国会議員0選」の李俊錫前同党最高委員 ©時事通信社

 党のテレビ討論では、李氏の質問に2位の羅氏や3位の朱豪英前党院内代表がむっとする場面や、緊張する姿が映し出された。今まで慣れ親しんできたものとは異なる戦法にどう対応すればいいのか困惑しているようだった。

国会議員選挙には3度落選

 それもそのはず。李氏は保守の論客としてテレビの常連コメンテーターとして知られた人物。舌鋒鋭く、ディベートに強い。しかし、そのため失言も度々。それでも、明快な語り口は人気があった。

 1985年、ソウルに生まれ、名門のソウル科学高校を2年で飛び級卒業した後は、韓国の理系で最高峰の国立大学「韓国科学技術院(KAIST)」に入学するも、ひと月ほどで退学。国の奨学金で米ハードード大学に入学し、コンピューターサイエンスと経済を学んでいる。大学時代には、父親と高校・大学(ソウル大学)が同窓である「国民の力」の劉承旼議員の事務所でインターン経験がある。

 卒業後は教育関連のベンチャー企業を立ち上げたが、2011年、当時セヌリ党の非常対策委員長だった朴槿恵前大統領の目に留まり、弱冠26歳で非常対策委員会委員に抜擢された。そのため、「朴槿恵キッズ」とも呼ばれたが、2016年の朴前大統領弾劾訴追では弾劾に賛成。党内では傍流ともいわれたが、2020年には党の最高委員を務めた。国会議員選挙には3度挑戦しているがいずれも落選している。