昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/06/18

source : ノンフィクション出版

genre : 働き方, 社会, 読書

 会見では稀にだが、特定の記者と知事がムキになって言い争う場面があるが、知事は何も、目の前の記者を相手に質疑応答を行っているわけではない。記者の後ろにいる、メディアを視聴する都民・国民に向かって話しかけているはずだ。それを忘れて、記者の質問を無視したりはぐらかしたり、あるいは、こそこそと逃げるように会見場を去る知事に、都民への誠意を感じることはできない。

 小池知事の愛想笑いとドヤ顔、それに不愉快そうな表情をご覧になりたければ、毎週金曜の定例会見をお勧めする。

謎のペーパーとメディア・コントロール

 会見場で小池知事が懇意の記者しか指名しないことは業界筋ならずとも有名な話である。会見が始まると、担当職員から知事にこっそり手書きのペーパーが手渡される。そこには記者席のどこに、どの社の誰が座っているかが記されている。

©iStock.com

 知事はこのペーパーを手元に置き、自分が贔屓(ひいき)にする記者を指名する。知事は首を左右に振って次に指名する記者を探し、ランダムに当てているように見えるが、そんなことはない。誰がどこの記者なのかを把握した上で、完全に計算ずくで指名しているのである。

 だから、批判的な記事を書く記者は最初からマークされ、たとえ手を挙げても質問する機会を与えられることはほとんどない。いつまで経っても指されないので「もう質問するのは諦めました」と心情を私に吐露してくれた全国紙の記者もいたくらいである。逆に、昵懇(じっこん)の記者は毎回のように質問を許され、そのたびに知事から微笑みを返される。その差は歴然である。

 小池知事1期目の初期、知事がまず取り組んだのは若い女性記者の懐柔だった。メディア各社は駆け出しの記者を都庁に配置することが多い。ちょうどいい練習の場なのだろう。その中で女性記者も目立つ。知事は機会を見つけて不慣れな女性記者たちに声をかけ味方に引き入れた。報道番組のMCあがりの知事にとっては朝飯前。自らが女性であることを武器に女性の味方を演出する典型例である。

z