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“若い女性記者を飼いならし、敵対する記者を完全把握” すべて計算ずくで指名する小池百合子流の“メディア・コントロール術”

『ハダカの東京都庁』より#1

2021/06/18

source : ノンフィクション出版

genre : 働き方, 社会, 読書

 知事に気に入られたと勘違いした彼女たちは、会見の場で「休みの日は何をして過ごすか」とか「きょうの服の色は……」とか枝葉末節(しようまっせつ)の質問をして記者仲間の失笑を買っていた。その一方で、前述した通り、自分にとって不利な記者に対しては、徹底的に排除の姿勢で臨んでくる。これが小池流のメディア操作術である。

 さすがメディアの扱いに長けた知事だと喝采を送っている場合ではない。小池知事のメディア懐柔とイメージ操作は、事の本質をベールで覆い隠し、都民の知る権利を気づかないうちに侵害しているのである。

会見前の打ち合わせが知事最大の関心事

 さて、会見の冒頭は知事からの情報提供タイムだ。質疑の時間はこれが終わってからになる。実はこの会見冒頭の発表ネタを仕込むのが、事業を所管する各局にとって一苦労なのである。

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 コロナ禍にあっては都からの発表案件もコロナ対策に限られる傾向にあるが、平時においては何か良いネタはないかと、知事サイドから矢の催促を受ける。毎週必ずメディアの気を引かなければ満足しないのが、小池知事だからである。

 目立つネタ、取り上げてもらえそうなネタが、毎週出てくるはずもない。それでも、乾いた雑巾を絞るように、各局はどうでもいいイベント情報をかき集めては、知事サイドに差し出す。どれだけの時間と労力が費やされたのかを知事本人は知るよしもない。

 ある局の広報担当者がこう表現していた。「毎週のように、知事に持たせる花束を作らされてばかりいる。毎回、違う種類の花でなければ気に入ってもらえないから大変だ。こんな仕事、もううんざり」と。こんな調子だから、せっかく用意された花束は大抵が安物の造花である。

 毎回、小脇にファイルを抱えて会見場に入ってくる小池知事だが、直前までドタバタ劇が繰り広げられていることはあまり知られていない。

 小池都政下、知事への説明で最も重要視されているのは、現下の重要案件でも予算案件でもない。会見のための打ち合わせである。会見での質問に窮することなく、弁舌爽やかに答えられるかどうかが、小池知事最大の関心事に他ならない。そして、会見を乗り切るための強力なツールが、直前まで手を加えられる想定問答集、すなわち、あのファイルなのである。