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“若い女性記者を飼いならし、敵対する記者を完全把握” すべて計算ずくで指名する小池百合子流の“メディア・コントロール術”

『ハダカの東京都庁』より#1

2021/06/18

source : ノンフィクション出版

genre : 働き方, 社会, 読書

note

 毎週金曜、午後2時から行われる東京都知事の定例記者会見。落ち着いた様子の小池百合子都知事とは裏腹に、会見開始5分前まで加筆訂正等が行われる現場は、まさにドタバタ劇。

 そんな会見の舞台裏を描いたのが、東京都庁に30年以上勤め、知事のスピーチライター、人事課長を務めた元幹部・澤章氏による『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)である。同書から一部を抜粋し、定例記者会見の驚くべき裏側を紹介する。

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会見打ち切りの不思議

 知事の定例記者会見は原則週1回、第一本庁舎6階の会見場で行われる。小池知事は毎週金曜午後2時スタートを旨としている。ネット中継を通じて誰もがリアルタイムで視聴できる。

 会見の主役はもちろん知事だが、主催はあくまで都庁記者クラブと呼ばれる大手メディア各社で構成する団体である。クラブの歴史は古く、都庁が有楽町にあった時代から営々と続いている。新聞社を中心とする「有楽クラブ」とテレビ局などで構成される「鍛冶橋クラブ」が合併したものである。

©iStock.com

 以前は、このクラブに所属していなければ会見に参加できなかった。今ではフリーのジャーナリストも含めて自由化され、近年では、ネット系の新興メディアが存在感を増している。

 ネットメディアは小池知事のお気に入りである。既存のメディアは知事に批判的なところが多い。それを嫌って、あえてネットメディアにすり寄ったのだ。ネットメディアも存在感を増したいがゆえに、権力者におもねる態度を隠そうとしない。両者の利害が一致したというわけである。

 定例記者会見に話を戻す。主催者の意向とは関係なく、会見は往々にして知事の都合で一方的に打ち切られる。「それじゃあ、次が最後の質問で……」と記者席を制し、返答が済むと知事はそそくさとドアのほうに向かう。記者席から「まだ、質問が残っていますよ」「〇〇についてどう考えますか?」と声が飛ぶが、知事は振り向くこともなく記者の問いかけを無視していなくなる。

 会見の開始時刻は知事サイドの都合で遅延、変更されるのにもかかわらず、終了時刻だけは予め知事サイドに決定権があることになっている。おかしな話である。会見後のスケジュールの関係はあるにしても、毎回とはいわないが、記者からの質問が尽きるまで対応するのが知事の務めなのではないか。他の自治体ではそうしている知事もいる。