文春オンライン

“若い女性記者を飼いならし、敵対する記者を完全把握” すべて計算ずくで指名する小池百合子流の“メディア・コントロール術”

『ハダカの東京都庁』より#1

2021/06/18

source : ノンフィクション出版

genre : 働き方, 社会, 読書

note

謝罪会見のお辞儀(じぎ)の静止時間と角度

 幸か不幸か私は、30数年間の役人人生で3回ほど経験してしまった。初めての謝罪会見はある事業局の不祥事を説明・謝罪する場で、私自身は人事課長として同席を求められたに過ぎず、気軽な気持ちで臨んだ。元上司でもあったある局長が冒頭の謝罪のお辞儀を開始した後、ちょっとした珍事が起こった。

 お辞儀で下げた頭を上げるタイミングをそろえるため、横目で局長を見ていた私は驚いた。この局長、いつまで経っても頭を上げないのだ。こうなりゃ私も意地でも頭を上げないぞと思った。15秒、まだだ。30秒、まだ上げない。会見場の雰囲気がざわつき始めたのがわかった。結局、1分近くは頭を下げていたと思う。誠意を表すにも限度というものがある。過ぎたるは及ばざるがごとしとは正にこのことである。

©iStock.com

 お辞儀の静止時間とともに重要なのがその角度、そして複数で頭を下げる際にはどうシンクロさせるかである。

ADVERTISEMENT

 お手本となる事例が2016年9月30日に起こった。小池知事が初当選し築地市場の移転が延期された直後、豊洲市場の地下にあるべき盛り土がなく、謎の空間の存在が明らかになった。急きょ中央卸売市場次長に命じられた私が取りまとめた「自己検証報告書」の発表の日だった。

 報告書の発表とはいえ、事実上の謝罪会見だった。担当の副知事、市場長そして私の3人が深々と頭を下げる写真が、翌日の新聞各紙を飾った。今見ても美しいお辞儀と言わざるを得ない。事前の打ち合わせが功を奏した。中央の副知事のタイミングに残りの2人が合わせると決めていたのだ。都庁の後輩の皆さんには是非、今後の参考にしていただきたいものである。

メディアとはギブ・アンド・テイク

 メディアとの付き合いは職層が課長、部長と上がるにつれて増えてくる。局長級ともなれば、記者との個人的なつながりもいくつかできてくる。その時、記者との距離感をどう保つかは難しい問題である。つかず離れずの姿勢をキープする人もいれば、夜の部を交えて敢えてズブズブの関係を築く人もいる。中には、若い女性記者との関係を重視する局長も……。