都庁職員の給与について、「カネのほうは安定性と引き換えに低空飛行に甘んじる傾向にある」と語るのは東京都庁に30年以上勤め、知事のスピーチライター、人事課長を務めた元幹部・澤章氏である。リーマンショックやコロナ禍の景気後退局面でも給料を減らされない都庁職員だが、そもそも、給与はどのように決定されるのか。

 同氏による『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)から一部を抜粋し、都庁の給与の実態についてを紹介する。

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都庁職員の給与はこうして決まっている

 公務員の世界はご多分に漏れず、煎じ詰めればカネと人事の世界である。

 カネのほうは安定性と引き換えに低空飛行に甘んじる傾向にある。1980年代後半のバブル期、都庁職員は民間企業のボーナスが大盤振る舞いされる様子を指をくわえて見ていたものだ。いやいやそれは違うだろ、リーマンショックやコロナ禍の景気後退局面でも給料を減らされないなんて結構な御身分だと言われれば、グウの音も出ないのではあるが。

 ではそもそも、都庁職員の給与はどのように決定されるのか。知事が決める? 都議会が決める? 厳密にいえば、どちらも不正解である。都庁職員の給与は民間給与との均衡を図る必要があるとされ、都庁組織から独立した人事委員会が、民間企業の給与状況を毎年調査して、その動向をもとに都議会と都知事に勧告して決められるのである。

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 調査対象は中小企業から大企業まで約1000社、あらゆる業種・職種の給与実態を調べている。その調査結果と職員の給与を比較して、「公民較差は極めて小さいため、改定を見送り」といった勧告が行われる。この勧告に職員は一喜一憂する。とはいえ、近年ではほとんど上下動がないので関心は薄れている。

 口には出さないが、職員の多くは、自分たちが都庁という名の大企業に勤めていると内心は自負している。そして、その割に給与レベルが低い(大学の同級生仲間と比べて高くない)と思っている節がある。特に、偉くなればなるほどその傾向は顕著だ。人事委員会による民間給与調査の対象が大小様々な規模の会社であるため、低く抑えられているとのひがみ根性も見え隠れする。

 ちなみに、人事委員会のホームページには、年代・職層別の年収モデルが掲載されている。それによれば、35歳課長代理で624万円、45歳課長1023万円、50歳部長1303万円となっている。果たして世間相場と比較して高いのか安いのか。恵まれていると認めるべきであろう。