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死体を細かく損壊し、その肉片等を公衆便所に

 その際には具体的な頭部の解体方法、脳を取り出す様子についての説明を行い、そのうえで、「取り出した脳を手に取ってよく見たが、ひと目で分かるような出血や血のかたまりは認められなかった」と証言した。

 また、松永弁護団による冒頭陳述でも、死体解体前後について、一連の流れが説明されている。松永の主張をもとにしたものなので、途中、意図的に加えられたと思しき文言はあるが、経過説明としては概ね事実に沿った内容である。説明は以下の通り。

〈被告人松永と被告人緒方は指名手配中であり、由紀夫の死体の処理に困り、当初、××(「片野マンション」に近い地名)の病院に死体を運んだ後に甲女を置いて2人で逃走しようと話し合ったものの、甲女が一人残されるのを嫌がったことから断念し、由紀夫の死体を解体することとした。同日午後10時から12時ころの間、被告人緒方と甲女が、まず死体の血抜きを始めた。甲女は父との別れを惜しむ意味で、由紀夫の死体解体を手伝った。

 

 甲女は、翌27日朝、××小学校に登校したが、学校で父の死について話すことなく、同日午後4時ころ帰宅した。その後、甲女は、被告人緒方とタクシーで××(ホームセンター)かどこかに行き、包丁、のこぎり4、5本、バケツ4、5個、なべ、消臭剤など解体作業の道具を買った〉

幼稚園勤務時代の緒方純子(1983年撮影)

 一方で、検察側の冒頭陳述には、もう少し細かな記述がある。

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〈被告人松永は、同緒方らに命じ、平成8年(96年)2月26日夜ころから同年3月21日夕方頃までの間、「片野マンション」の浴室内などにおいて、包丁、鋸及びミキサー等を用いて甲女の父の死体を細かく損壊し、さらに、その肉片等を公衆便所に捨てるなどの証拠隠滅作業を進めた――〉

骨は海に捨てた

 じつはその後、細かく分けた遺体を遺棄する作業は、一時中断している。というのも第2子を妊娠していた緒方が、途中で出産したからだ。同冒頭陳述は続ける。

〈被告人緒方は、妊娠中の二男の出産が間近であったことから、そのころ、タクシーに乗車して大分県日田市内の産院に向かい、平成8年3月××日午前零時30分ころ、上記産院において、二男を出産した。

 

 その後、被告人松永は、同緒方らに指示し、甲女の父の骨を大分県の海中に投棄させ、さらに、死体損壊用具を北九州市小倉南区内の河川などに投棄させるなどして、証拠隠滅を遂げた〉

 なお、松永弁護団の冒頭陳述では、松永の発言を受けて、由紀夫さんの骨を海中に投棄したのは「水葬」の意味があったと主張している。以下記す。

〈由紀夫の死体の骨は、水葬の意味を込めて、骨は海に散布することとし、クッキー缶十数缶に分けて入れた上、被告人緒方と甲女が電車、タクシーを乗り継いで竹田津港(大分県)まで行き、徳山(山口県)行きフェリーに乗り、甲板からクッキー缶の中身の骨だけを捨てた〉