「いやぁ~、ミッチーよ!」
マツコ・デラックスが歓喜する中、登場したのは「ミッチー」こと及川光博だ。『マツコの知らない世界』は、あるジャンルを愛した人が、それをマツコにプレゼンする番組。普段は、著名人ではなく一般の人が出演するのが基本だが、今回のように時折例外もある。とかく一般人が出るところに芸能人が出るようになるとテコ入れだと思われたり、番組本来の良さが失われたりしがちだが、この番組はそうならないラインをしっかり守っているように見える。それは本当にその人の好きなジャンルを選んでいるからだろう。たとえば、及川光博が出るならば「ミッチーの世界」にしてもおかしくはない。けれど、ミッチーが選んだのは「ナポリタンの世界」だ。
ミッチーのナポリタン好きは、自身のツアーグッズとしてオリジナルのレトルトのナポリタンを発売したり、楽曲の歌詞に登場したりしているためファンにはよく知られた話。さらには『相棒』で及川が演じた神戸尊がナポリタン好きという設定は彼のアドリブによるものだったという。細かな知識という面では、この番組に普段出演するマニアたちにもしかしたら劣るかもしれないが「ナポリタンに分析や理屈はいらない! Don't Think! Eat!!」とキラキラしながらキメキメで言うように、オススメのナポリタンを小細工なしで紹介していくから気持ちいい。開始約17分でようやく自己紹介に入ると、「家族と出かけた洋食店キャロット(蒲田)でナポリタンと出会う」との略歴にマツコは「ミッチー、蒲田だったんだ。反動かな? 蒲田からこんな人、二度と出てこないよ!」と笑う。
今年、芸能生活25周年、51歳になった及川光博。ミッチーが番組に出演するという情報を知った時点で、きっとマツコはミッチーに好感を持っているはずだと思っていたが、予想通り「スゴい好き! 若い子に見せたい。ミッチーがよりミッチーだった頃!」と熱く語り、現在は俳優のイメージの強い彼のミュージシャンとしての一面にも触れる。マツコは以前、自らの女装を「武装」だと形容していた。だから「ミッチー」というキャラクターで「武装」することで、自らの表現に徹する及川光博に共感するのだろう。「ミッチーって様式美の中で生きていられる方じゃない? 様式美を崩すのはお下品な行動なんですよ。ミッチーはミッチーとして楽しむもの。様式美を見せてくださっている数少ない稀有な方の1人」と評すのだ。
「打ち合わせしてないからね!」とマツコが弁明するほど、噛み合った2人のトークとナポリタンを通して、「及川光博」という人物像を、その「様式美」を維持したまま立体的に浮かび上がらせていた。
INFORMATION
『マツコの知らない世界』
TBS系 火 20:57~
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/