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JRと私鉄の協調関係のきっかけに

 もうすこし広い視野で見ると、この直通運転をきっかけに、JR東日本と関東大手私鉄の関係性が変わったといえる。鉄道会社としてのライバル関係から、互いの得意分野を提供し合って利益を共有する関係だ。

 現在、JR東日本は関東大手私鉄と共同の取り組みをいくつか実施している。東急電鉄とは東急グループの伊豆急行を通じて付き合いは古く、伊豆急行の開業時から伊東線と直通運転を実施している。伊豆急行の観光車両2100系「リゾート21」が東京駅まで乗り入れて「リゾート踊り子」として走ったこともある。2018年に伊豆方面で観光型MaaSの取り組みを始めた。観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」は横浜駅と伊豆方面を結び、JR東日本区間を走って東急東横線と伊豆を結ぶ。

 2019年には小田急電鉄とMaaSについて連携すると発表し、2020年12月には西武ホールディングスと包括提携、2021年3月から京急電鉄と「JR&KEIKYU ふらっと列車旅(とれいん)」を開始。京成電鉄とは成田空港駅への鉄道乗り入れ30周年でイベントやコラボグッズを展開した。このような取り組みの先鞭が東武鉄道との直通運転かもしれない。

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「スペーシア」のリバイバル塗装、引退への花道か?

「スペーシア」は白地の車体で窓まわりが黒帯、赤とオレンジのラインをあしらった姿で登場した。

 その後、初登場から20年を過ぎた2011年に客室のリニューアルが行われ、合わせて塗装も変更された。白地にオレンジ帯の「サニーコーラルオレンジ」、白地にブルー帯の「粋」、白地にパープル帯の「雅」がそれぞれ3編成ずつ。2015年には「サニーコーラルオレンジ」のうち2編成が金色に黒帯の「日光詣スペーシア」特別塗装になった。これは日光東照宮の四百年式年大祭を記念した仕様だ。

オリジナル塗装の100系「スペーシア」 ©杉山淳一

 そして今年6月5日から、1編成が1990年登場時のリバイバルカラーが走り始めた。「スペーシア」の誕生30周年を記念した企画で、今年度は9編成のうち2編成にリバイバルカラーを施し、その後、さらに3編成がリバイバルカラーになる予定だという。

 これはちょっと気になるところだ。懐かしく話題性もあるけれども、製造から30周年と言えば、先代の引退した車齢と同じ。最後の車検でリバイバルカラーとし、元に戻さずに引退というパターンは多い。スペーシアのリバイバルカラーも、もしかしたら引退の花道、新形と交代する前触れかもしれない。