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「なに、この空間?」アダルトショップで感じた強烈な違和感

――女性向けの商品も含め、今もTENGAは事業の成長を続けています。そもそもなぜアダルトグッズであるプレジャーアイテムにたどり着いたのですか?

松本 もともと小さなころから「いつかモノづくりの仕事に携わりたい」という気持ちは持っていたんです。社会人になってからは、15年ほど自動車整備士や中古車販売の仕事をしていたんですけど、やっぱり何か「新しいものを作っていろんな人に喜んでもらいたい」という思いがありました。だから、家電量販店とかで色んな商品を見ては、「これはなんで売れるんだろう?」「どうして機能は一緒なのに、こっちは売れないのか」等々、独自に研究をしていたんです。

 それで、ある時久しぶりに近くのアダルトビデオショップに行き、奥にあるアダルトグッズコーナーに入ったんですよ。入るなり、「なに、この空間?」っていう強烈な違和感を覚えた。これまでリサーチで見てきた家電量販店などと違って、なんというかすごく「不安な空間」だったんです。商品を見ても、JANコードもないし、生産国表記もない。家電だと、真っ先にお客様相談センターの番号が書いてあるのに…と思ったんです。

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マスターベーションは人の「根源的欲求」から来るもの

――端的に言えば、手に取りづらい怪しい商品が多かったのですね。

松本 そうです。新商品の棚に、女性器の形だったり、子どもの裸のイラストだったり、エグイ商品が置いてあって。その棚を見た時に、ここにあるものは「物凄く卑猥でわいせつで、すごくエロいものです」と商品が語っているように感じた。でも、瞬間的に「これはおかしい」と思ったんです。

――どういった部分に違和感を抱いたのでしょうか。

松本 マスターベーションというのは、人の「根源的欲求」から来るものです。「性」は人間になくてはならないものですから。にもかかわらず、これでは自ら商品を貶めていると思った。そこで、もっとフレンドリーで、明るくて、一般の物として扱われるような商品を作れば、絶対に支持されるという直感がありました。

©️文藝春秋

――そこからTENGAの開発につながるのですね。

松本 「ないなら、僕が作ろう」と思い、その場で決心しました。家電もそうですけど、良い商品って「誰に喜ばれたいのか、どう使われたいのか、どう喜ばれたいのか」という想いが必ず込められているんです。TENGAにおけるモノづくりとは「モノに想いを込めること、そしてその想いを伝えること」なんです。作り手の気持ちを届けるまでが商品なんですよ。

「こういう想いで、こういうものを作りました」というのがなければ、共感は生まれない。どういう想いで作ったかに共感が生まれ、それがあって初めて「買ってみようかな」と思ってもらえるんです。