長らく続くコロナ禍の中、多くの人がマスク着用や会食の自粛など、目には見えないストレスを感じながら生きている。そんな中、リラックスを求めた人々から熱いエールが送られている商品がある。赤とシルバーのデザインが一度見ただけで忘れられない「TENGA」だ。

 商品名でもあり、メーカー名でもある「TENGA」。人間の3大欲求の1つとも言える「性」の部分において、誰もが手に取れるデザインのセルフプレジャー商品は革命的な発明だった。一体、「TENGA」はどのようにして生まれた商品だったのだろうか。開発者でもあり、起業家でもある松本光一社長に話を聞いた。(全2回の1回目/後編を読む)

©️文藝春秋

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セルフプレジャーアイテム、コロナ禍の影響

――昨年来、世界中を襲っているコロナウィルスのパンデミックが続いています。セルフプレジャーアイテムの販売にも影響はあったのですか?

松本 あらゆる商品に言えることですが、日本を訪れる海外旅行客が減って、いわゆる「爆買い」のようなインバウンド効果がなくなったというのはあります。一方、海外では傾向が異なりました。コロナ禍に入って、アメリカやヨーロッパなどの国では「マスターベーションに対する意識が変化している」という調査結果があります。

 具体的には「コロナ禍において、マスターベーションがストレス解消になった」と答えた人が増えました。特にアメリカでは7割に達した。精神的に追い込まれた状況の中で、マスターベーションが、リラックスしたり、ストレスを解消することに役立ったと言えます。命にかかわる状況下では性欲が増えると言われていますから、コロナウイルスの感染状況が深刻だった国ではこうした変化が生まれたのかもしれません。

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発売後1年で大きな変化が

――かつてはどこか「後ろ暗い」イメージのあったセルフプレジャーアイテムですが、近年はそのイメージも変わってきたように感じます。

松本 TENGAは常に「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というビジョンに向かっています。「性」というのは人間の根源的欲求ですよね。そこに対して「後ろめたいと思わずに、普通に使えるものである」という思いがあるんです。

 今でこそ、皆さんから親しまれていますが、最初はイベントで配っても貰ってくれる人がとても少なかった。でも、発売から1年後には、みんながスッと受け取ってくれるようになった。これは大きな変化だったと思います。

――発売から1年で、認知度が大きく変わったんですね。

松本 認知度ゼロの状態から、最初の1年で本当にガラッと変わりましたね。プレジャーアイテムは、5000個売れるとヒット商品と言われていた。それがTENGAは2005年の発売1年目で100万個売れたんです。おかげで、最初は生産が追い付かなかった。さすがにそこまで一気に売れるとは思わなかったですね。