コロナ禍、我々の生活様式は一気に変わり、住環境について、改めて考えはじめる方も多いのではないだろうか。
「住む場所の選び方」や「一戸建てか、マンションどちらに住むべきか」など、我々の疑問に答えてくれるのが、ジャーナリスト・河合雅司氏による『コロナ後を生きる逆転戦略 縮小ニッポンで勝つための30カ条』(文春新書)である。同書から一部抜粋してコロナ後の家選びについて紹介する。
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住む街を通勤の利便性で選んではいけない理由
老後の暮らしを考えよ。家を選ぶのではなく、街を選べ。理想は吉祥寺
駅、商店、病院、自然。車ナシでも用事の済む街を探そう
コロナ禍によるテレワークの普及
あなたは住む場所を選ぶとき、最寄り駅やバス・地下鉄・鉄道の路線など、勤め先への通いやすさを基準に選んでいないだろうか。
20代、30代であれば、そうする意味もあるだろうが、子育てが終わった世代ともなると、正直なところ、あまり賢明な考え方とは言えない。
なぜなら、これから通勤する年数よりも老後の人生のほうが、はるかに長いからだ。 定年までは職場に近いところで暮らし、老後は別の場所に移り住むという考え方もあるだろう。だが、高齢になってから地域社会に溶け込もうとしても、うまくいかないことの ほうが多い。加えて、コロナ禍によってテレワークがずいぶんと普及した。日本の企業文化では根付かないと言われていたが、テレワークについてはコロナ禍が主導した大きな変化である。テレワークの普及を契機に、本社やオフィスの一部を都心から郊外に移転させる企業も出てきた。通勤という行為そのものが減っていく傾向は、アフターコロナの時代においても変わらないだろう。
では、何を基準にして“終の棲家”を選んだらよいのだろうか。ここで考えるべきは、 長い老後をどう「戦略的に縮む」かだ。ポイントは、自分が暮らすコミュニティを作っていけるところかどうかだ。それは都心か、郊外か、という問題ではない。
歳を重ねれば、交際範囲は若い頃と比べて狭くなる。若いうちなら難なくできたことが、できなくなる。それこそゴミ捨てや買い物にさえ苦労するのである。病気で動けなくなることもあるだろうし、愛する伴侶に先立たれて、何十年ぶりに独り身になるのは普通のことだ。そんなとき、地域で支え合い、助け合うことのできるコミュニティの存在が、あなたの生命線になるのである。
たとえば、同級生など昔からの親しい仲間たちで、同じ地域に移り住むことができれば、理想的だろう。まだ動ける人間が、手足の不自由になった仲間を助けるというように。 だが、それはほとんど夢のような話で、実現できる人のほうが稀だろう。