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 だからこそ、まだ自分が動けて人の役に立てるうちに、地域のコミュニティに積極的に関わり、ネットワークを築くことが重要なのだ。人の助けを借りるようになってから、その輪の中に入ろうと思ったところで、相手にされまい。

吉祥寺というモデルケース

 人びとが助け合って暮らすコミュニティというのは、街づくりにおける「戦略的に縮む」手法である。働き手が減っていく社会にあっては行政機関の人手不足も懸念されており、今後は行政サービスの縮小も予想される。住民がカバーしなければならない領域が増えるのに、人々が勝手に振る舞っていたのではいろいろなことが機能しなくなるからだ。

 そのコミュニティづくりの具体策については、どのような街が向いているのだろうか。

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 全国各地に素晴らしいコミュニティがあるとは思うが、私が注目しているのは、東京・吉祥寺だ。実際、「住みたい街ランキング関東版」(リクルート住まいカンパニー)では2017年に1位に輝き、 2018年から4年連続で3位と、常にトップクラスをキープしている。

©iStock.com

 若者、子育て世代、高齢者まで幅広い年代の人たちが住んでいる。住民たちも吉祥寺という街を愛していて、そのブランド価値を損ねてはならないという意識が高い。

 自治体としては東京都武蔵野市だが、住民たちは武蔵野市ではなく吉祥寺に住んでいるのだという気持ちが強い。こうした意識から自治体が主導しなくても、住民たちのコミュニティが構築されるのである。

 吉祥寺は、オフィス街に囲まれている都心の繁華街と違い、中心部の周囲には住宅街が広がっている。近くには井の頭恩賜公園もあり、歩いていける範囲に、駅も商店街も自然も揃っている。自家用車がなくても用事が済ませられる。少子高齢時代の街としては理想的である。

 吉祥寺のように駅周辺の中心市街地に施設が集中していなくとも、地域内に多数の拠点があり、公共交通機関で結ばれていれば、問題ない。むしろ、こうした「多極ネットワーク型」の街のほうが現実的である。

 一方、多摩ニュータウンのように昭和期に開発された郊外の団地群は現状のままならば、少子高齢時代に老後を過ごすには、なかなか難しいのではないだろうか。