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「“終の棲家”は吉祥寺?多摩ニュータウン?」「買うなら一戸建て?マンション?」知っておくべきアフターコロナの“住環境”

『コロナ後を生きる逆転戦略 縮小ニッポンで勝つための30カ条』より#1

2021/06/29

source : 文春新書

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル

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大規模修繕の成功例

 この大規模修繕のリスクがとりわけ高いのが、タワーマンション(20階建て以上)である。タワマンは1997年の規制緩和によって建設可能となり、 2000年代に建設ラッシュを迎えた。首都圏だけで745棟、22万7301戸にも及ぶ(2020年12月末、東京カンテイ調べ)。

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 タワマンの修繕費は通常のマンションの約1.5倍かかると言われている。高層のため足場が組めず、ゴンドラなどによる高所作業となり、工期が長期化するからだ。エレベーターも高速の特注タイプのため、億単位の費用がかかる。

 大規模修繕の成功例として引き合いに出されるのが、埼玉県川口市の「エルザタワー55」だ。1998年に建てられた55階・650戸のタワマンだが、2015年から2年がかりで1回目の大規模修繕が行われた。費用は約12億円で1戸あたり約200万円。追加金は発生せず、積立金で賄えたという。

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 このタワマンでは管理組合が修繕の8年前から工事業者選びを始めるなど、準備万端だったことが功を奏した。それでも2回目の大規模修繕では、費用が大幅に増加することは避けられない。

 タワマンに限らないことだが、近年、修繕積立金は段階的に値上がりするシステムが主流になっている。前掲の国交省調査によると、2010年以降に完成したマンションのうち67.8%が段階増額積立方式を採っている。新築分譲時には売りやすくするために低めに設定されているものの、10年後に2倍、15年後に3倍と値上がりしたり、一定期間ごとに100万円単位の一時金を求められたりするのである。

 毎月の住宅ローンを抱えながら、修繕積立金の値上げはつらいが、収入の減る定年後にさらなる負担を求められるのは、もっと厳しい。実際、修繕積立金が集まらず、計画上の積立金額に達していないマンションも少なくない。同調査によれば、計画した金額に達していないマンションは、実に34.8%に及び、 2割超の不足を抱えているマンションが15.5%もあるのだ。