「籍を入れるなら縁を切る」
しかも俺もちょっと迂闊で、女房の両親に挨拶に行く時に、真っ黒なジャガーで乗り付けてしまって、その時点で「こいつカタギじゃねえ」と疑われちゃったんだ(笑)。それで心証が最初から良くなかったんだろうね。
でも、決定的に揉めることになったキッカケは、彼女の姉の主人(義兄)の行動だったんだ。その土地の風習なのかもしれないけど、俺や女房っていう当事者に何も言わずに、女房の義兄が俺の両親を探し出して、勝手に会いにいっちゃったんだよ。興信所を使った身辺調査みたいなノリなんだ。おまけにノーアポで突撃した先が俺の親父の仕事場で、そこで「オタクの息子さんはどういう人間ですか」なんて言い出したそうで、そんな非常識な話はないじゃない。だから俺の親父が怒っちゃって「おめえらに言う筋合いはねえ」なんて言い返しちゃった(笑)。
そんな両家が殺伐とした中で、俺は11月の彼女の誕生日に籍を入れようと思ってたんだけど、当日の朝に女房の父親から電話があってね。「籍を入れるなら縁を切る」って。
結果、本当にそのまま縁を切ることになって、女房の父親とはそれ以来一度も会えず終いだった。向こうのお母さんいわく、孫が産まれたって時は会いたがっていたみたいだけど、それも叶わず亡くなっちゃったよ。
ただ、お葬式の時に女房1人で息子を連れていったから、お母さんには孫を抱かせてやれたらしいけどね。息子がちょうど幼稚園の年長さんか、小学校に上がったばかりの頃だった。俺が知る限り、女房の実家の方の親類と会ったのはその1回だけだから、息子は全然記憶に残っていないみたいだけどね。
元々、女房も若い時から家出したりして色々とあっちの家も感情的に複雑だったみたいなんだ。そんな背景がある上に、俺もあっちの父親も意地っ張りだからさ、こじれにこじれて誰も幸せじゃない話になってしまったんだろうね。
これは後で話すけど、実は俺も姉と絶縁していて、やっぱり俺のAV男優っていう仕事が常について回って、結局そういうことになってしまうんだ。女房も自分で言ってるからね。「普通の仕事の人が良かった」って。