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 超能力ブームは、「超能力を信ぜざる者は人にあらず」という空気が醸成されるほど過熱したが、「週刊朝日」1974年5月24日号(朝日新聞社)が関口少年のスプーン曲げのトリックを捉えた写真を掲載、「衝撃スクープ」「科学的テストで遂にボロが出た!」「“超能力ブーム”に終止符」と報じると、ブームは一転する。「週刊朝日」のスクープ以降、超能力ブームは急速に下火になって収束する。

自粛した局と続けた局

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 以下は、東京・大阪の二局が超能力番組の自粛を決めたことを報じる1974年5月23日付「朝日新聞」の記事(リードを除く本文)である。超能力番組に対して当時なされた批判の要点を把握できる内容なので、長くなるが、全文を引用する。

 自粛を決めたのは大阪の毎日放送で、このほどNETなどネット局にも配慮を求める申し入れをした。大阪府教委から「スプーン曲げには、トリックを使っている子どもがおり、テレビで取り上げるのには教育上問題がある」との申し入れがあったからだという。

 TBSも「局員を拘束してはいないが、新しい事実が出ない限り放送しない」という。同局の宇田テレビ本部長は「もともと民間放送連盟がつくった“放送基準”103条で心霊など、科学を否定するものは扱わないことになっている。手元が映ると念力が出ないなど、超能力者を自称する人たちの撮影条件を受け入れた形で番組を構成すると、どう解説してみても、テレビ局が超能力演出の片棒をかついだとみられるからだ」という。

 しかし、これまでたびたび超能力番組をやってきた日本テレビは、さる20日の記者会見で「番組としてはとにかくおもしろいんだから、これからも続ける。科学でも証明できないことはいくらでもある」と動じない。

 超能力番組が多くなったのは昨年秋ごろからで、はじめは外国の超能力実演をフィルムで紹介する形で始まった。その後、外国の超能力者の一人といわれるユリ・ゲラーのスプーン曲げを放送したところ「私もスプーンが曲がる」という人が大量に現れ、ブームが頂点になった。

 各局は、こうしたスプーンを曲げられる少年少女たちを番組に出演させた。しかし、もともとスプーンは手で曲げることができることや、この“超能力者”たちは「視線が直接当たると力が出ない」などと、さまざまな条件を付けるため、本当に念力で曲がったかどうかはとても証明できない。このため超能力か、そうでないかは曖昧なままで、子ども番組やワイドショーが競って超能力番組をつくり、20数回出演したという超能力タレントまで現れた。

 あるテレビ局のプロデューサーは「インチキ超能力者が多かった。科学では理解できない現象も目撃したが、なにしろ“自分だけの空間をつくってほしい”という彼らの要求を入れると、直接目で見ることができないため、どうしてそのような現象が起きるかは解明できるはずがない。出演した子どもたちがみんなウソつきとは思えないし、むしろ自己催眠にかかって、力で曲げていたように思う」という。