1980~90年代に霊能力者として数多くのテレビ番組に出演し、一躍お茶の間の人気者になった宜保愛子氏。一度は下火になったオカルト番組ブームを再燃させた彼女の存在は、これまでの超能力・霊能力者たちと比べて何が異なっていたのだろうか。
ここでは宗教とメディアについての研究を続ける高橋直子氏の著書『オカルト番組はなぜ消えたのか 超能力からスピリチュアルまでのメディア分析』(青弓社)の一部を抜粋。当時の制作サイドの構造的な問題とともに一連のブームを振り返る。(全2回の2回目/前編を読む)
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オカルト番組を転回させた宜保愛子
宜保愛子が霊能者としてテレビ出演するようになったのは、1970年代半ばである(*1)。80年代にテレビ出演を重ね、講演会もおこなうようになり、89年には「女性自身」で連載された「宜保愛子のスター心霊対談」が話題となる。90年、『たけしの頭の良くなるテレビ』(TBS、8月17日20時―20時54分)に出演し、ビートたけしをすっかり神妙にさせたことで社会的な注目を集め、91年には「宜保愛子ブーム」が出来する。
*1 当時、子どもたちにテレビ出演を反対され、関東地方では放送されない大阪・読売テレビに出演していたという(野口雄一郎「霊感師・宜保愛子かく語りき」、文藝春秋編「文藝春秋」1991年5月号、文藝春秋、349ページ)。
1991年3月1日、『金曜テレビの星!』で放送された「驚異の霊能力者・宜保愛子」(TBS、以下、「驚異の霊能力者」と略記)は、19.4パーセント(ビデオリサーチ。以下、視聴率はすべてビデオリサーチによる)の視聴率を記録した。電話が放送中に約700本、トータルで4000本を超える問い合わせがあり、投書も2000通を超えるという大反響だった(*2)。
*2 講談社編「週刊現代」1991年6月22日号、講談社、203ページ。なお、ニールセンでは21.6パーセント。『金曜テレビの星!』(TBS)枠では、過去最高視聴率だったという。
同月17日、『NHKスペシャル』(NHK総合)で「立花隆リポート 臨死体験 人は死ぬ時何を見るのか」が放送され、これもまた大反響を呼んだ。視聴率は16.4パーセント。NHKでは、同番組に続けて18日から3日連続で『現代ジャーナル』(NHK教育)でも臨死体験を取り上げ、第1回「死線から帰還した人々」、第2回「精神と肉体の極限で何を見るのか」、第3回「科学はどこまで迫れるのか」を放送、『NHKスペシャル』『現代ジャーナル』合わせて565件の電話があり、投書は約200通(同月25日現在)届いたという(*3)。
*3 小学館編「週刊ポスト」1991年4月12日号、小学館、45ページ