1991年、宜保は「テレビに出演すれば20パーセント以上の高視聴率、本を出せばすべてベストセラー(*7)」というセンセーションを巻き起こす。宜保の名を冠した特番に共通する特徴は、霊能力への「科学的アプローチ」を謳うこと、あるいはドキュメンタリーの手法がとられることである。これは宜保愛子というタレントを得たことで開かれた、オカルト番組の新境地といえる。
*7 「POTATO」1991年10月号(学研プラス)43ページ、扶桑社編「SPA!」1991年9月11日号(扶桑社)6ページ、「創」1991年12月号(創出版)34ページ、など。
“宜保愛子”以前・以後でオカルト番組は根本的に違う
1990年代前半のオカルト番組(特番)は、死後の世界や心霊現象・超常現象を「(最新)科学」で「(徹底)検証」「解明」するという企画が主流になるが、このようなコンセプトで構成されるオカルト番組は、それまでのオカルト番組とは根本的に異なることになる。
1970年代から80年代の〈オカルト〉は、「現代最後のロマン」であり、科学では解明できない謎/不思議だった。オカルト番組は、心霊現象なり超常現象なりを「もしかしたら、そういうこともあるかもしれない」と視聴者に思わせるところで「ロマン」を感じさせるべく、謎/不思議を演出した。つまり、番組の構成上、心霊現象や超常現象の真偽は問題にならない。「こんなことが本当にあるんでしょうか? テレビをごらんのみなさんは、どう思われますか?」と司会者が問いかけるオカルト番組では、超常現象はウソでもホントでも、曖昧なままでかまわない。要は「ロマン」「謎」である。そうであるからこそ、オカルト番組はやらせを織り込みずみで許容されてきたと考えられる。
しかし、心霊現象や超常現象の謎/不思議を解明・検証するというコンセプトが立てられる場合、番組の構成上、解明・検証の対象となる現象があからさまにフィクションであっては番組が成り立たない。したがって、1990年代のオカルト番組は、必然的に番組内の心霊現象・超常現象がホンモノであることを強調するようになる。