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「凡人にはない力をもっている」「やらせは一切ない」“驚異の霊能力者”こと宜保愛子が変えたオカルト番組の“常識”とは

『オカルト番組はなぜ消えたのか 超能力からスピリチュアルまでのメディア分析』より #2

2021/07/17
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 臨死体験という重くて難しい、しかも一歩誤ると、民放がワイドショー番組などでのぞき趣味的に取り上げる神秘ブームやオカルトブームのようにもなりかねないテーマを、NHKがこれほど正面から大まじめに放送したのも画期的なら、その反響もまた画期的といえそうだが、そもそも、一連の番組は、立花氏のオリジナル企画として持ち込まれ、昨年丸一年かけて取材・編集されたものだという。「今回、これほど反響があった背景に、仮に今、神秘主義ブームのようなものがあるとすれば、立花さんはあくまで臨死体験に科学的にアプローチしているわけですが、やはり彼の時代感覚がすごいということだと思います。高齢化社会で死に対する関心が高くなっているということも、大きな反響があった理由かもしれません」(亀村チーフ・ディレクター)(略)立花氏が臨死体験にあくまで科学的にアプローチしているのに対して、その臨死体験を自らも二度体験し、その時に見てきたという霊界のことを、あくまでも体験的に語っているのが、〔著書が驚異的な売れ方をしていると:引用者注〕冒頭でも触れた宜保愛子さんだ。彼女も「死後の世界」ブームの“仕掛け人”のひとりといえる(*4)

 

*4 小学館編「週刊ポスト」1991年4月12日号、小学館、45―46ページ

霊能力に科学的にアプローチする

 実際、宜保はブームの“仕掛け人”の一人といえる。1991年3月、一連の「臨死体験」番組の成功が立花隆の「時代感覚」によってもたらされたとするならば、「驚異の霊能力者」の成功もまた、宜保愛子の「時代感覚」によってもたらされたものなのである。制作プロデューサーの池田文雄(*5)によれば、番組制作のきっかけは宜保からの霊能力に科学的にアプローチしたいという申し出だった。

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*5 日本テレビで『スター誕生』を看板番組に育てた名物プロデューサー。1984年に日本テレビを退社、当時はフリーだった。

「親しい付き合いになってるし、本当はあまり仕事でひっぱり出したくなかったんですよ。そしたら宜保さんが、自分のこういう能力をちゃんと調べられないかって言うんですよ。で、調べるなら、こういうのはアメリカかソ連だけどソ連は混乱してるから、じゃアメリカ行きますか、といったら、彼女はやるっていうわけ。それで、ドキュメントを手がけてる日本テレワークと組んで、正面からやることにしたんです(*6)

 

*6 野口雄一郎「霊感師・宜保愛子かく語りき」、文藝春秋編「文藝春秋」1991年5月号、文藝春秋、350ページ