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 たとえば、1991年4月12日に放送された『世紀末!!異次元パワー!超常現象を見た!!』(フジテレビ)を紹介するPR記事の小見出しは、「ヤラセ番組をつくりたくないからこそ、真剣に霊能者をチェック!」であり、番組プロデューサーが次のように語る(*8)

*8 取材に応じた番組プロデューサーは小林信正。2012年に刊行された森達也『オカルト――現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ』(角川書店)に、彼のインタビューがあることを付記しておく。

「心霊現象や超常現象など、科学で解明されていないことを扱った番組を20年以上前から手がけてきました。いままでは、こういったものを“怪奇なもの”や“オバケ”に近い存在として扱った番組を作ってきましたが、今回はどこまで超常現象を検証できるか、との観点で番組を作りました(*9)

 

*9 「週刊明星」1991年4月20五日号、集英社、126ページ

 記事は、テレビにはいいかげんな霊能者は出演させられないので、番組プロデューサーがテストをおこなっていると伝える。番組に登場する霊能者はホンモノだとアピールすることが、番組PRとして効果的と考えられているのである(*10)

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*10 「週刊明星」1991年4月25日号、集英社、127ページ。なお、この番組に登場した霊能者は、前田和慧や織田無道である。また、前回(1990年10月5日)の放送で、幸せを呼ぶといわれる白魔術を紹介していて、今回はテレビを通してそのパワーを受け取ったという視聴者を取材、再び視聴者に白魔術パワーを送るという企画も放送された

「霊能力があるかないかでなく、あることを前提に番組を作っている。」

 1990年代のオカルト番組は、番組の構成上、番組の内部に〈半信半疑〉を構築することが不可能になる。このオカルト番組の転回における最大の功労者が、宜保愛子だった。

 以下は、1993年12月16日付「朝日新聞」に掲載された記事の抜粋である。

 宜保さんとの付き合いが丸4年という日本テレビの三島由春プロデューサーは「宜保さんが凡人がもち得ない力をもっていることは間違いない」ときっぱり。「昨年から、霊能力があるかないかでなく、あることを前提に番組を作っている。科学ドキュメントとして見てほしい」という。(略)宜保さんの特番を組むことの多い日本テレビとTBSは「事前に教えることは絶対にない」と口をそろえて反論する。日本テレビの三島プロデューサーは「既存の学問の常識に合わないので認められないという学者の体質が問題だ」と大槻教授らを逆批判。日本テレビは今月30日、「宜保愛子・新たなる挑戦2」を放送する。(略)日本テレビの肝付邑子考査部長は「断定的に視聴者に信じさせるのは放送機関としてまずい。エンターテインメントとして、疑問符を残してほしい」と現場よりも慎重だ。ただ「今の番組が社会に悪影響を及ぼしているとは思わない。現場に『やらせは一切ない』と言われると、それ以上は立ち入れない」とも(*11)

 

*11 「朝日新聞」1993年12月16日付夕刊