藤井の成績は、中学生棋士の中でも突出している
次に藤井と同じ中学生棋士である加藤(14歳7ヵ月で四段)、谷川(14歳8ヵ月で四段)、羽生善治九段(15歳2ヵ月で四段)、渡辺明名人(15歳11ヵ月で四段)の年齢別の成績を調べてみた。それが表の一覧である(藤井の成績は、未放映のテレビ対局を除く)。
4人の19歳になるまでの主な戦績を紹介すると、加藤は18歳3ヵ月でA級棋士、谷川はB級1組昇級、羽生は竜王挑戦、渡辺はC級1組昇級をしている。それぞれ好成績を挙げており、将来の飛躍もうなずける。
だが、それらを大きく上回るのが藤井の成績である。表を見てわかるように、5人の中でもっとも多く勝ち、なおかつ負け数がもっとも少ない。しかも、唯一タイトル戦を経験し、獲得した上で5人中最高の成績なのだ(羽生は竜王挑戦を決めているが、七番勝負前に19歳になった)。そして、タイトル3期で最高段位である九段まで上り詰めた。19歳になるまでに挙げた実績があまりにも多い。
ちなみに、藤井は四段昇段から5年近く指していて、これまで3連敗したことがない。
表で藤井の成績を見ていると、15歳のころは勝率8割を切っている。7割8分という勝率も非常にすぐれているのだが、ほかの年齢時の成績が高すぎるため、不調のように見えるのが恐ろしい。実際は、15歳時に藤井はC級1組昇級、第11回朝日杯で史上最年少の全棋士参加棋戦優勝、竜王戦のランキング戦連続昇級といった戦績を挙げて、四段から七段に昇段している。
そうした棋士が、19歳になる前に将棋界の最高段位である九段に昇段してしまうのは言葉もない。空前絶後の記録になるかもしれない。
2020年度の成績は…
ムック『読む将棋2021』の「数字で読む将棋」で、筆者は藤井の年度別の成績に触れた。その後、2020年度の成績が44勝8敗(勝率は0.8461)と決まったので、それについて分析しよう。