1ページ目から読む
3/3ページ目

 現在、藤井、渡辺、豊島将之竜王、永瀬拓矢王座がタイトルホルダーであり、「4強」と呼ばれることが多い。下の表は、2020年度における4強の対戦成績である。同年度は、八大タイトル戦のうち名人戦で豊島-渡辺戦、棋聖戦で渡辺-藤井戦、叡王戦で永瀬-豊島戦、王将戦で渡辺-永瀬戦が行われ、4強同士で激しくぶつかり合った。

©文藝春秋

「4強」以外の棋士には9割勝っている

 通算成績からするとさすがに勝率は落ちるが、藤井は3人に8勝4敗と勝ち越している。そして、この数字を裏返しに見ると、2020年度は4強以外の棋士との対戦は36勝4敗、つまり9割勝っていたことがわかる。

 その40戦を順位戦のクラス別に分けたのが下の表だ。対B級2組や対C級でほとんど負けていないのは、順位戦で全勝だったことを踏まえるとうなずけるだろう。強豪ぞろいの対A級と対B級1組でも高い勝率なのが圧巻である。

ADVERTISEMENT

©文藝春秋

 渡辺、豊島、永瀬の3人も、4強以外の対戦では7割以上勝っており、高いレベルで安定している。

 実際、2019年以降のタイトル戦は必ず4強の棋士の誰かが登場し、2019年の王位戦以外はすべてのタイトルを得ている。4人がここ2、3年の将棋界を牽引しているのは間違いない。八大タイトルを8人で持ち合う状況が生じた2018年からは状況が変わっている。

 第2グループが4強にどう切り込むか、4強同士の争いを誰が制するかが現在の棋界の大きなテーマといえる。

今後の棋界勢力図を占う重要な争い

 2021年度の藤井は本稿執筆時点で、対渡辺戦3勝0敗、対豊島戦1勝1敗、対永瀬戦1勝0敗である。ここまで2勝7敗と対戦成績で分が悪い豊島とは、王位戦で防衛戦をこなしつつ、叡王戦で挑戦して「十二番勝負」となっている。

 また、現在進行中の竜王戦で藤井が挑戦者になれば、こちらも豊島とのタイトル戦になる。豊島と藤井のタイトル戦は今後の棋界勢力図を占う意味で重要な争いになるだろう。

文春将棋 読む将棋2021 (文春MOOK)

 

文藝春秋

2021年3月9日 発売

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。