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博多駅の“絶妙なバランス”

 と、鉄道のターミナルとしての博多駅はこれくらいである。これくらい、というには大きすぎて文字数を割くことになってしまったが、とにかく博多駅は新幹線・在来線・地下鉄が見事に存在感を放っていて、地味な路線など何ひとつないという絶妙なバランスを取っている。

 そして、その駅を覆うがごとくそびえているのがJR博多シティ。九州新幹線の全通と同じ2011年にオープンした駅ビルで、阪急百貨店から映画館から、まあいろいろ入っている。だいたい地域を代表するターミナルとはそういうものだが、とにかくでかい。

 
 

 そして西側(博多口という)には巨大な駅前広場があって、バスターミナルやKITTE博多、いくつものホテルにオフィスビルが建ち並ぶ。とにかく、ザ・博多、九州の行政の中心地なんだなあという実感を持つことができる駅前だ。対して新幹線の改札にも近い東側(筑紫口という)も、すぐ近くにヨドバシカメラがあるしホテルがたくさんあるし、文句のつけようのない大都会である。

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なぜターミナルが「福岡」ではなく「博多」なのか

 新幹線・在来線特急・通勤電車・地下鉄・巨大駅ビルと駅前広場。博多駅はこの大ターミナル必須5要素(いま勝手につくりました)をすべて兼ね備えているのだから、「お客の数が東京のターミナルと比べるとねえ」などとケチをつけるほうの心が小さい。東京のように大きすぎないがゆえに迷うこともあまりなく、ひとつとてケチのつけようのない、正真正銘のお手本のようなターミナルなのだ。

 ところが、どうしても疑問が残る。なぜ、博多駅なのだ。福岡市のターミナルなのに、なぜ福岡駅ではなく博多駅なのだろう。

 東京から新幹線に5時間も乗っている間にはいくつもの大都会があった。そしてそのどれもに、都市の名前がそのまま駅名に与えられている。「新」がつくところもあるが、横浜・静岡・名古屋・大阪・岡山・広島。どれも都市名=駅名である。なのに、せっかく終着駅までやってくると、急に都市名と駅名がずれてしまう。

 都市のターミナルはいわば他の地域に対する“顔役”だ。それがこんなややこしいことになっていていいのか。その疑問を解明すべく、タイムマシンにおねがいしてワルツのテンポが今宵も流れる鹿鳴館の時代に行ってみることにしよう。