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 もちろん三崎氏に異存はない。同氏が加藤氏と連絡をとってひと月も経たない15年5月中旬、加藤氏提案の脱税工作が動き出す。

脱税と正反対の経理処理をした16年9月期

 三崎氏は15年5月以降も、合意内容に基づいて加藤氏に連絡を取り続けた。架空の広宣費を送金する口座として、加藤氏は飯尾氏のサイバー社のほか、自身が経営するA社の口座を指定。これを受けて三崎氏は、メディア社の経理を担当している派遣社員のN氏(49)=法人税法違反幇助の疑いで逮捕されるも不起訴処分=に送金額を指示して、仕入高と仮払消費税の名目でサイバー社とA社の口座に送金させた。当時のメディア社は広宣費の科目を使用しておらず、これに該当する費用を「仕入高」の科目で経理処理していたという。メディア社からの入金を確認した加藤氏は、その10%相当額を差し引いたあと、三崎氏かN氏に残る90%相当額を現金で手渡して還流させた。

 メディア社の15年9月期の税務申告で、三崎氏はサイバー社などに対する架空の仕入高を計上するとともに、この仕入高分を14年10月から15年9月までの架空の課税仕入れとして計上した。この脱税工作によって、同社の15年9月期の所得額は本来より約4389万円少ない約1100万円となり、法人税額は約1119万円少ない約196万円、地方法人税額は約49万円少ない約8万6000円に抑えられた。メディア社は14年10月から15年9月までの消費税約274万円と地方消費税約73万円も免れ、同期の脱税総額は約1515万円に上った。

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 ところが翌16年9月期になると、メディア社を取り巻く事情が一変する。三崎氏は16年1月頃から、香港証券取引所の新興企業向け市場である香港GEM市場に同社を上場させようと計画。同市場の上場基準を満たす利益を形式上確保するため、16年2月下旬以降はサイバー社などに対する架空広宣費の支出を停止した。

 また、香港GEM市場の上場に向けた準備を進める過程で、上場のサポート業務を行うX社から休眠会社「スカーリ」を紹介されたメディア社は、実際に同社に発生して16年9月期に計上する必要があった広宣費と仮払消費税の一部を、スカーリに立替払いさせた。その上で、この広宣費と仮払消費税の一部の計上を、翌期の17年9月期に繰り延べることで(広宣費の支払い相手はスカーリ)、16年9月期の損金(経費)額を圧縮した。これはメディア社の所得を増やす方向での経理処理で、前期の脱税工作とは正反対の行為だ。

 だが、メディア社とスカーリとの間で発生したトラブルがその後深刻化したため、三崎氏はメディア社の香港GEM市場上場を断念する。上場基準を満たす目的で帳簿上の利益額を確保しておく必要がなくなったため、メディア社が新年度入りした16年10月以降、同氏は自由に使える資金を手元に確保する狙いから脱税工作の再開を目論んだ。