「脱税には当たらない」とする都合のいい解釈
「マルタは海外から移り住む投資家や企業に著しく低い税率を適用するタックスヘイブン(租税回避地)で、キャピタルゲイン(売買益)に対する課税もありません。暗号資産取引関連の法整備も進んでおり、最大手取引所のバイナンスやOKEⅹが拠点を移す暗号資産先進国でもある。1月1日時点で住民票が日本国内にあると地方税の納税義務が発生するため、マルタへの本格的な移住を検討していた三崎氏は、18年末までに住民票を消除しておこうと考えたのでしょう」
マルタを拠点に、年末年始をイタリアなど欧州で過ごした三崎氏は19年1月20日に帰国。2月6日のツイートでは、即決価格8億8000万円でインターネット・オークションに出品された、名器ストラディヴァリウスとされるヴァイオリンの落札に強い意欲を示すものの、その6日後には、法人税法違反などの疑いで東京地検特捜部に逮捕された。
三崎氏はこの時、「脱税はしておらず、自分は絶対に捕まらない」と確信していた。その理由は、加藤氏から「メディア社がサイバーマーケティングなどに架空発注した広宣費分の売り上げに課せられる法人税は、こちらで責任を持って納める」と言われていたからだ。三崎氏は「本来ならメディア社側で納税すべきなのかも知れないが、納税自体は行われているのだから、脱税には当たらない」と本気で考えていた。もちろん、仮に加藤氏側が法人税を納めていたとしても、三崎氏が脱税に問われることは言うまでもない。
ところが、事実は全く異なっていた。19年1月30日、東京国税局査察部の強制調査を受けた三崎氏は、査察官から「メディア社が架空広宣費を計上した飯尾と加藤の会社は、メディア社からの架空広宣費分の売り上げに課せられる法人税など納めていない」と告げられて驚愕する。
架空の業務委託費(外注費、この場合は広宣費)の大半を還流させる手法は、脱税工作の中でも最も基本的なもの。これが「脱税に当たらない」と考えること自体、三崎氏の税金に対する理解力の乏しさの証明とも言える。それでも同氏はなお「キックバックは加藤氏に提案されてやったことで、飯尾氏の会社が広宣費分の売り上げに課せられる法人税を納めていないことは聞かされていないから、脱税には当たらない」と考えていた。
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