架空広宣費の計上先を増やした17年9月期
脱税工作再開に向けて、三崎氏は16年10月末頃から加藤氏と再び連絡を取り合う。すっきりフルーツ青汁の大ブレイクで、メディア社の業績は、2年前とは比べ物にならないレベルにまで拡大。15年9月期と同じ程度の架空広宣費を計上したところで、圧縮できる所得はたかが知れている。加藤氏と、同氏から相談を受けた飯尾氏は思案した。
「架空広宣費の計上額を大幅に増額しないと、メディア社の納税額はかなり巨額になる。一方で、メディア社の架空広宣費を増額させると、事業実体がある程度存在するA社に利益が生じてしまう。今回は架空広宣費の計上先にA社を使わず、飯尾が実質管理している事業実体のないペーパー会社を利用して、架空広宣費の計上先数を増やそう」
そこで加藤氏は三崎氏と連絡を取り、新たな架空広宣費の計上先を伝えた。
「今回は架空広宣費の計上先を変更する。サイバー社は使うが、A社はもう使わない。飯尾さんが実質管理している『トレース』と『イーストウエスト』を新たに使うので、その口座に送金してほしい」
これを受けて三崎氏は、経理担当のN氏に送金額を指示し、サイバー社などに対する広宣費と仮払消費税の名目で各社の口座に送金させた上で、その90%相当額を加藤氏から現金で受け取った。
ところで前述した通り、メディア社は香港GEM市場に上場を目指す過程で、実際に発生した広宣費と仮払消費税の一部について、休眠状態のスカーリに立替払いさせ、計上時期も本来の16年9月期から17年9月期に先延ばしする計画を立てていた。そこで三崎氏はN氏に指示して16年11月と12月、スカーリに立替払いさせていた金額に、同社に対する報酬相当額を足し合わせて、広宣費の名目で同社の口座に送金した。本来ならこれは16年9月期に計上すべきものだったが、三崎氏は17年9月期に計上することで、同期の所得をさらに圧縮した。
こうしてメディア社の17年9月期決算には、サイバー社など飯尾氏関係の3社と、スカーリに対する前期分の広宣費がそれぞれ計上され、所得額は本来より約4億6947万円少ない約30億2771万円に圧縮された。法人税額は約1億2319万円少ない約6億9447万円、地方法人税額は約542万円少ない約3055万円。また、これら架空の広宣費を16年10月から17年9月までの課税仕入れとして計上し、相手先に支払う消費税額が増えたことで、メディア社は納めるべき消費税約2949万円と地方消費税約795万円も併せて免れ、この結果、同期の脱税総額は約1億6605万円に上った。