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《因縁の韓国戦へ》日本バレー界初の“五輪女性監督”中田久美が語った「絶対に負けられない理由」

人を見下した態度にペットボトルを投げつけたことも #3

2021/07/31
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 そんな中田を「青い炎のような人」と表現するのは、野村HD執行役員で野村證券常務の池田肇だ。野村HDは東京2020のゴールドパートナー。オリンピック・パラリンピック推進責任者の池田は、普及活動中に中田と知り合い意気投合。

「以前は赤い炎を滾(たぎ)らせる闘士というイメージでしたが、実際に話してみると冷静で思考が深い。五輪に対する熱は、赤い炎よりさらに温度が高い青い炎のよう」

 中田は東京でメダルの獲得はもちろん、選手を将来女性管理職になれるよう育て、他にも何かレガシーを残したいと考えていた。64年の東洋の魔女は、ママさんバレーの人口を増やし、それまで家事、育児と家に閉じこもっていた女性たちに、エプロンをジャージに着替えさせ、外に連れ出した。

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全日本女子バレー代表 ※2018年当時 ©文藝春秋

バレー界初の五輪女性監督として古い価値観とも戦っている

 2020年に向かう中田は、実業団バレー、ママさんバレー、身障者のシッティングバレー、聴覚障碍者のデフバレー、そしてビーチバレーを横断的に繋げないかと考え、『Ball for All』を発案。

「同じバレーボール競技なのに、組織が別々で選手の交流もない。お互いに力を合わせれば出来ることが増え、バレーの発信力も高まるはずです。今はどの競技もオリンピックとパラリンピックの組織は別々。バレーボールが成功すれば、他の競技も参考にしてくれるんじゃないかと」

 古い歴史を持つ野村も組織改革が急務となり、事業のデジタル化に取り組んでいる池田は、自分の体験から中田を慮る。

「一企業でも組織改革は大変な労力が必要。ましてや中田さんは伝統のある女子バレーを率い、バレー界初の五輪女性監督として、古い価値観や組織体制とも戦っているはずです。まさに改革者だと思いますね」